多店舗展開のメリットを最大限に活かした経営手法と具体的な実行方法
更新日:2023.10.3
投稿日:2022.11.23
複数の店舗を経営する「多店舗展開」をテーマに、シリーズで記事をお届けしています。本稿では、多店舗展開に成功して得られるメリットを詳しくご説明します。
多店舗展開のメリットは、消費者(顧客)の視点に立つことでより明確になります。
「あの店がもう少し近くにあったらなあ・・・」
「これだけ手広く展開しているのだから、この店の商品は信用できるだろう」
など、あなたもひとりの消費者として感じたことがあるでしょう。
実はこの視点を持ち、出店する場所の選定や店作りを進めることが、成功の大きな秘訣です。
そこで今回は、
・多店舗展開が消費者に与えるメリットと成功ポイント
・経営上のメリットと成功ポイント
の順に、私たちDokTechの経験をもとにご説明します。
DokTechの運営元である「こどもプラスホールディングス」は、福祉事業の1つである、放課後等デイサービスの企業です。フランチャイズ事業を展開し、全国に190の加盟店を有しています。
加盟店の多くは多店舗展開のメリットを活かした教室づくりを行い、利用者の利便性と療育(自立支援のための医療・教育の取り組み)の専門性を高めています。その成果は売上に現れ、利益率30%に迫る事業所も珍しくありません。
本稿を読めば、弊社が取り組む「多店舗展開のメリットを活かした経営」が理解できます。多店舗展開を目指す経営者様の大きな力になれるでしょう。
なお前回は、
・多店舗展開のデメリット
・多店舗展開を行う判断基準
を説明しました。
デメリットとその解決方法を理解し、適切な出店時期を判断できてこそ、多店舗展開で成功を収められます。未読の方は先に『多店舗展開のデメリットを解決し最適な時期に出店する方法』をご覧ください。
目次
多店舗展開が消費者に与えるメリットと成功ポイント
新店舗の出店先を考えるとき、
「この場所なら他社に勝てる」
「○○市に進出すれば市場を独占できる」
など、経営者目線で戦略を練りがちです。
それは間違ってはいませんが、「消費者(顧客)の視点」を忘れてはなりません。競争相手は同業他社でも、店舗に利益をもたらすのは消費者です。消費者が便利になり、これまで以上に自社を利用しなければ、ビジネスとして成立しません。
そこで、本章では「消費者のメリット」に焦点を当てます。
出店先として私たちがおすすめするのは、商圏が重なるエリアです。近隣に系列店や姉妹店があることで、消費者にはさまざまなメリットがあります。
その内容を理解することが、
- 出店場所の絞り込み
- 集客に有利な店舗づくり
に役立ちます。メリットを享受する消費者の視点に立てば、「新店舗になにが望まれるか」理解できるからです。
本章で解説する成功ポイントを実践すれば、消費者のニーズを満たす新店舗をつくり上げられます。
自宅や勤務先の近隣で利用しやすくなる
顧客がせっかく自社の商品やサービスを気に入っても、地理的条件で頻繁に通えなければ、固定客にならないケースがあります。
たとえば自宅から電車で何駅も離れた場所にお気に入りの飲食店があっても、普段から利用する気にはならないでしょう。
より近い場所に競合他社があれば、普段はそちらを利用します。つまり顧客の自宅や勤務先から店が遠いことが原因で、せっかくのビジネスチャンスを逃しているのです。
もしも顧客の生活圏内に新店舗ができたら、頻繁にお店を利用でき、固定客として定着するかもしれません。
顧客の生活圏を知ることが成功のポイント
「顧客にとってより便利な場所」を知るには、先に顧客の生活圏を調べる必要があります。
顧客の住所を容易に入手できる業種なら苦労はありませんが、飲食店やスーパーなど不特定多数の人が出入りする業種では、住所の入手は困難です。
そこで取り得る対策は、
- ポイントカードを用意し、作成時に住所を書いてもらう
- キャンペーンを実施し、応募のさいに住所の記入を必須にする
- アンケートを実施し、住所のある程度の部分まで記入してもらう
などです。
ポイントカードは再訪の意志がなければつくりません。キャンペーンやアンケートも、熱心なリピーター以外は協力しないでしょう。
つまり、これらはお店のファンであり、「新店舗の利用が期待できる人」の住所だけを効率的に割り出せる手法なのです。
顧客の生活圏がわかったら、下記のエリアを順にピックアップします。
①多数の顧客が居住している ②現在の店舗からは距離が遠い③競合他社も進出し始めている |
①②を満たせば、新店舗出店に適していると言えるでしょう。自社の顧客が数多く居住し、既存店舗では不便なエリアだからです。
さらに③を満たすエリアは、「競合他社が新たな商圏として注目している」証拠です。
伸びしろのあるエリアを放っておいたら、自社の顧客を奪われかねません。③も満たすなら、早期出店を検討すべきです。
この結果をもとに、地域リサーチと競合他社の運営状況をリサーチし、自社にとって最適な時期(※)に出店を行います。
リサーチの具体的な手法は『儲かるエリアと競合他社のリサーチ方法|開業前の調査が経営の成否をわける』でご案内していますので、参考にしてください。
※)最適な出店時期は『多店舗展開のデメリットを解決し最適な時期に出店する方法』の第2章を参考に判断してください。
目にとまる場所にあることで来店の意識が芽生える
生活圏内に同じ看板を掲げる店が複数あれば、それだけ目にする機会が増えます。何度も看板に意識を向けることで、それまで興味や関心がなかった人でも好印象を持つようになります。
これはザイオンス効果(単純接触効果)と呼ばれ、購買意欲を高める効果的な手法の一つです。
たとえば毎日の通勤で利用する道すがら、何店も同じ看板を掲げるラーメン店を見たら、
「おいしい店なのだろう。仕事の帰りに開いていたら寄ってみよう」という気持ちになります。
隠れたニーズを掘り起こし消費者の希望を叶えた例
さらに、お店の商品やサービスが、消費者の隠れたニーズを掘り起こせば、消費者の背中を押す「良い出会い」になります。
たとえば私たちが運営する放課後等デイサービスでは、多店舗展開で次のようなニーズを掘り起こしました。
◆児童福祉サービスの利用を漠然と考えてはいたものの、どのような施設が良いかわからず、療育先の問題を先延ばしにしていた方 ◆子どもが一人で通えない遠方にしか施設がなく、子どもの預かりを諦めていた方 ◆放課後等デイサービスを「いずれは」利用したいと思っていたが、「まだいいか・・・」と、時期を先延ばしにしていた方 |
目につく場所に「見たことがある」教室ができたことで、「子どもを安心できる施設に預け、効果的な療育を受けさせたい」という保護者様のニーズが顕在化したのです。
多店舗展開が顧客の背中を押して成功した事例です。
認知度を向上させるには消費者の「目にとまる」努力が必要
消費者の目につく場所に複数の店舗があれば、それだけ認知度が上がります。認知度が上がればザイオンス効果や隠れたニーズの掘り起こしが期待でき、集客が劇的にしやすくなります。
そのため、新店舗を選定するときには「目につく」ことを優先的に考えましょう。できるだけ歩行者や車から目が届きやすく、利用に不便がない場所を探します。
ただし、
- 駐車スペースがない
- 渋滞した道路に面していて車で入りにくい
- 入り口がわかりにくい
などの特徴がある物件は避けるようにしましょう。新規顧客が入りづらさを感じます。
看板や店の装飾も、自社の事業内容が端的に伝わるよう留意します。店の雰囲気や格式を壊さない程度に、目立たせると良いでしょう。
店舗数が増加することでより信頼を寄せられる
多店舗展開はその会社が好調な経営を続けている証です。事業内容が広く支持されているからこそ、複数店舗を維持できます。
したがって、生活圏内に複数の店舗がある状態は、顧客に経営への信頼感をもたらします。店への信頼は、なによりのブランディングの武器です。
「この店ならば信頼できる」というイメージが顧客の中に形成されれば、過度な価格競争やサービスを行わなくても客がついてきます。
なお、ブランディングの効果や詳細は『効果的なブランディングとは?顧客に選ばれ続ける会社の実践的なつくり方』で説明しています。
顧客を裏切らない経営努力が必須
ただし、多店舗展開で顧客の信頼を培うには条件があります。「顧客の信頼を裏切らない誠実な経営を続けること」です。
- 店舗が増えたぶん、サービスが手薄になる
- 店舗ごとに商品やサービスの質にばらつきがある
- 従業員の負担が増え、それが店の雰囲気を悪くする
などの状態を招かないよう、注意しなければなりません。これらの状態に陥りそうなら、十分な準備ができるまで多店舗展開を見送るのが賢明です。
特定のエリアに集中的に出店することでサービスの質が上がる
同一商圏内の店舗数が増えれば、より質の高いサービスが期待できます。なぜなら、会社が「エリアマーケティング」を行いやすいからです。
エリアマーケティングとは、エリアごとに特化した市場調査のことです。
その場所の土地柄や人々の購買行動、交通インフラなどを考慮し、最適な店づくりを行います。その結果、消費者は「サービスが良くなった」「より便利になった」と感じるようになります。
たとえば同一市内に複数のスーパーを展開していれば、地域が抱えるさまざまな事情に対応できます。
・A町はお年寄りが多く、バスの本数も少ないので、電話での宅配サービス導入を検討する ・市全域で4月に小中学校の運動会があるため、金曜の午後になったら家族向けの「バラエティ総菜パック」を売り出す ・市全域で8月になると「炭酸まんじゅう」を食べる文化が根付いているため、7月下旬から宣伝を開始し、1日になったら一斉販売する |
などです。
地域に密着しているからこそ、消費者のニーズを見越したサービスを提供できます。
店舗数を拡大できるならドミナント戦略を立てる
「ドミナント戦略」とは特定のエリアに集中して出店する経営戦略です。エリアマーケティングを行いやすく、消費者に質の高いサービスを提供できます。
認知度が上がるため新規顧客を獲得しやすくなり、既存顧客だけに頼る必要はなくなります。新規顧客にも「あの店は質が高い」と信頼してもらえれば、会社全体のブランディングも進むでしょう。
さらに一社が独占的に展開する地域には、競合他社が進出しづらい利点もあります。経営が順調で店舗網を拡大していけるなら、この戦略を念頭に置くと良いでしょう。
多店舗展開の経営上のメリットと成功ポイント
消費者へのメリットと同様に、多店舗展開は会社にもさまざまなメリットをもたらします。
その内容は単に「儲かる」という一言では表現しづらく、
- 組織づくりの楽しさ
- 専門性を持つ喜び
- 自社の社会的役割の強化
など、仕事のやりがいや楽しさに通じる要素も持ちあわせます。
多店舗展開により社会の一員として働く意義が強まり、日々の仕事を楽しみながら利益を追求できるのです。
ただし、それには多店舗展開のメリットを最大限活かした組織づくりが必要です。多店舗展開後に営業が伸び悩む事業所は、せっかく享受できるメリットを活かしきれていない可能性があります。
本章では、経営上のメリットに加え、それを活かすポイントもあわせて解説します。
店舗ごとの専門性を活かした店づくりができる
狭いエリアで複数店舗を展開する場合、気をつけたいのが「共喰い現象」です。これは近隣に位置する自社店舗どうしが客を取り合う状態になり、両店舗とも売上を落とす現象です。
新規顧客を獲得できないままでいると、もともと既存店舗の顧客だった人たちだけを、複数店舗で奪いあう状態になります。
これを防ぐには、店舗ごとに差別化を図り、専門性を持たせることが有効です。たとえばアメリカン古着を販売する店舗を展開するならば、
- A店は’70年代ヴィンテージ
- B店はミリタリー物のデッドストック
- C店は靴や革小物
など店の「顔」となる特色をつくります。
これにより、各店舗の専門性が消費者に強く認知されます。店舗ごとのブランディングが進み、固定ファンが生まれ、新規顧客も獲得できるでしょう。売上だけでなく、会社全体のイメージも向上します。
このように店舗ごとに専門性を訴求できるのは、多店舗展開の大きなメリットです。職員全員がそれぞれの店づくりに励むことで、
- 仕事が楽しくなる
- 特定分野のスペシャリスト集団になれる
など、モチベーションもアップにも繋がるでしょう。
社会福祉業界では仕事の意義が大きくなる
私たちが放課後等デイサービスを展開する茨城県つくば市の直営事業所では、複数ある教室にそれぞれの役割を定め、専門性を持たせています。
<「こどもプラス」直営教室での教室づくりの例> ・中高生を対象にした、就労支援や自立支援に特化した教室 ・小学校高学年を対象にした、プログラミングやSSTなど興味を喚起し将来に繋がるコンテンツを取り入れた教室 ・小学校低学年を対象にした、プログラミングや絵画、現代アートなど自ら進んで学べるコンテンツを取り入れた教室 ・未就学児を対象にした、言語指導に重点を置く「児童発達支援」教室 |
各教室が専門分野を持つことで、療育の質が向上し、保護者の信頼をより強く得られるようになりました。
さらに、幅広い年齢の子ども達に対応可能になったことが大きな変化です。とくに中高生向けの教室は、付近にサービスを提供する事業所が少ないことから、「大きな社会的意義のある出店ができた」と自負しています。
福祉事業者としての法人の存在意義を、より強めるきっかけになりました。
多店舗展開後は既存店舗を含め変革を進める
このように店舗ごとに専門分野をつくれることが、多店舗展開の大きな強みです。新たなブランディングを図るつもりで、店づくりに取り組むと良いでしょう。
ただし、そのさいは既存店舗も含め戦略を練るようにします。
新店舗が特出する中、既存店舗が変わらないのでは、「この会社は既存店舗を切り捨てたのか?」と顧客から疑いの目を向けられます。せっかく培った信頼を失いかねません。
さらに魅力ある新店舗ばかりに人が集まり、既存店舗が弱体化することも考えられます。
職員の適性を活かした効率的な人員配置を実現する
近隣での多店舗展開であれば、店舗間で職員の融通が利きます。さらに店舗ごとに特色を打ち出せば、職員が有する専門性にあわせた人員配置が可能です。
- 各店舗の専門性が、職員の知識でさらに引き出される
- 職員の専門性がさらなるブランディング要素になる可能性がある
など、適切な人員配置で店づくりがさらに加速することも期待できるでしょう。
職員の専門性の把握とそれをもとにした新店舗計画が必要
ただし、店にあわせた配置を行うには、各職員がどのような専門性を有しているか、経営者自身で把握する必要があります。逆に言えば、職員の専門性がわかれば、それをもとに各店舗の方向性を考えられます。
先ほどのアメリカン古着店なら、
- Aは70年代古着マニアだ
- Bはミリタリー物を集めているらしい
などの情報を、面接や普段の業務で入手します。それをもとに「70年代古着」「ミリタリー物」に特化した店舗づくりを策定します。
リスクへの対応力が上がる
多店舗展開を行った後、なんらかの事情で特定の店舗の経営状況が悪化する可能性もあります。そうならないよう努力するべきですが、経営者である以上、リスクは常に考えておかなければなりません。
店舗を複数所有していれば、一つの店舗の経営が悪化してもほかで補填できます。好調な店舗からお金や人材を融通しながら営業を続け、どうにか立て直しを図ればよいのです。
仮に一度店を閉じるとしても、ほかの店舗が好調な業績ならば、会社全体への影響は少なく済みます。
多店舗展開は、リスクに備える「保険」の役割も果たすのです。
さいごに
多店舗展開を行うさいは、消費者の目線に立ってメリットを考えましょう。そこでメリットが感じられない出店は、適切な出店と言えません。
消費者のメリットは次の4つにまとめられます。
<多店舗展開が消費者に与えるメリット>
①自宅や勤務先の近隣で利用しやすくなる
②目にとまることで来店の意識が芽生える
③店舗数が多いことが信頼感を与えてくれる
④特定のエリアに集中的に出店することでサービスの質が上がる
これらの項目から、多店舗展開時に考慮すべきポイントを導出できます。
<消費者目線からわかる成功ポイント>
①顧客の生活圏を調査した上で出店する
②消費者の「目につく」場所に出店し、目立つ店づくりをする
③顧客を裏切らない経営努力をする
④ドミナント戦略を利用し、特定のエリアに絞って出店する
これらに留意して店舗を選定し店づくりを進めれば、失敗はありません。
新店舗を出店したあとは、「多店舗展開が経営にもたらすメリット」を理解することが重要です。そのメリットを活かし経営を行えば、新店舗が軌道に乗りやすいからです。
以下の3つが、経営上の代表的なメリットです。
<多店舗展開で得られる経営上のメリット>
a.店舗ごとに専門性を活かした店づくりができる
b.職員の適性を活かした効果的な人材配置ができる
c.万一のリスクに対応できる
メリットを活かすポイントは次のとおりです。
<経営上のメリットを活かすポイント>
a.多店舗展開後は、既存店舗を含め変革を進める
a.職員の専門性の把握と、それを活かした店舗計画を策定する
このように、消費者・企業双方の立場で多店舗展開のメリットを理解することで、効果的な経営手法が見えてきます。本稿の「ポイント」を忠実に実行することで、失敗を防ぎ利益を最大化する多店舗展開が可能です。
それでも不安や悩みがある場合は、DokTechにご相談ください。
私たちは、フランチャイズ事業本部として、多数の加盟店様の多店舗展開を支援し成功に導いてきました。そのノウハウをもとに、多店舗展開を目指す皆様の力になります。業種に応じた具体的な施策をアドバイスしますので、どうぞお気軽にご相談ください。
著者情報
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フランチャイズ経営者やフリーランス、法人役員など、多種多様なキャリアをもつメンバーでお届けしています。
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