親の介護に直面するフリーランス・自営業者の「お金を守る工夫」

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親の介護に直面するフリーランス・自営業者の「お金を守る工夫」

更新日更新日:2023.10.3

公開日投稿日:2023.3.24

目次

前半と後半にわけ、フリーランス・自営業者が直面する「親の介護と仕事」をテーマに記事をお届けしています。後半は「お金を守る工夫」です。

日々自分自身でお金のやり繰りをしているフリーランス・自営業者にとって、親の介護費用は頭の痛い問題です。

親の資金だけで毎月の費用を賄いきれない場合、あなたにも費用負担が回ってくる可能性があります。

介護で仕事に充てられる時間が減り、ただでさえ事業収入が減少しがちです。そこに介護費用が加われば、生活が苦しくなることは避けられません。

介護期間が長引く場合、安定した収入が必要になり、フリーランス・自営業者を辞めざるを得ない恐れもあります。

それを防ぐには、あらかじめ費用負担を軽減する方法を知り、介護に直面したらすぐに実行に移すことが必要です。

介護費用の負担軽減には、以下2つの視点からアプローチします。

・親の費用負担を減らす視点

・あなたに金銭負担が回った場合の負担を減らす視点

まずは親の負担を少しでも減らし、親自身で介護費用を捻出できるよう工夫しましょう。それで賄いきれないぶんは、介護者であるあなた(または親族)が支払います。

あなたに費用負担が回ったら、世帯分離や公的サービスの利用などで、少しでも出費を抑えられるよう、打てる手をすべて打ちましょう。

本記事ではフリーランス・自営業者に向け、介護の費用負担を軽減する工夫を説明します。さまざまな工夫を知り実践することで、介護に直面したときの大きな助けになるでしょう。

なお、前編では親の介護が生じたときに頼れる公的サービスを一つひとつ説明しました。

介護保険制度を利用した場合の自己負担割合や、支給限度額にも言及しています。先にお読みいただくことで、本記事の内容をより深く理解できます。

フリーランス・自営業者が親の介護で利用できる介護を楽にする公的サービス

介護費用は親自身の負担が基本だが話し合いを忘れずに

介護費用は親自身の負担が基本だが話し合いを忘れずに

あなたの家庭では、親の介護に直面したとき、どのように対処するか話しあっていますか。

とくに介護費用は話しあいをなおざりにするべきではありません。親自身の負担が原則とは言え、支払いが困難ならば家族の誰かが負担しなければなりません。仮にあなたが支払うことになれば、予期せぬ費用負担が生活を圧迫するでしょう。

あなたの生活と仕事を守るためにも、次の順に確認を行い、家族間で認識を共有しておきましょう。

  1. 介護にかかる費用の把握
  2. 親の貯蓄状況の把握
  3. 介護費用が不足した場合の負担者

本章では①から順に詳細を説明します。

介護にかかる費用の把握

介護にかかる費用は介護度や介護期間により変化します。これらは事前に予測できません。そのため、介護費用は「平均値」を把握しておくと良いでしょう。

公益財団法人生命保険文化センターの調査(注1)によると、2021年時点での介護費用・介護期間の平均値は次のとおりです。

<介護費用の平均値(2021年)>

一時費用(※)合計74万円
介護費用月額(自己負担分)8万3000円
介護期間61.1ヶ月

※)一時費用とは、介護が必要になったときに、住宅の改造や介護用ベッドの購入など一時的にかかる費用です。

介護保険で1割〜3割の負担に抑えられても、介護にはこれだけの金額がかかります。介護期間も5年と長く、親の年金や貯蓄では賄いきれないことも予測しなければなりません。

親の貯蓄状況の把握

介護費用を誰が出すかの明確な規定はありません。一般的に「親自身の負担が基本」と考えられているのは、次の理由があるからです。

  • 子どもには子ども自身の生活・人生があるため
  • 年齢を重ねれば、子どももいつか「介護される側」に回る。そのときに自分の介護費用を自分で支払うため

まずは親の貯蓄状況や年金の額などを把握し、「月々どのくらいの金額なら払えるか」「どのくらいの期間支払いが可能か」を試算しましょう。

聞きづらいことではありますが、親が元気なうちに話をするのを忘れてはなりません。認知症で判断能力が低下した場合でも、家族は簡単にはお金を引き出せないのです。

介護費用の支払い方法や、介護が発生したあとのお金の管理など、いざというときのために情報を共有し、対策を取り決めておくことが必要です。

介護費用が不足した場合の負担者

親の貯蓄や年金で介護費用を賄いきれない場合、「誰が負担するか」を家族間で話しあっておきましょう。少ない金額ではないため、「ひとりだけに負担がのしかかる」状況は避けなければなりません。

民法第877条(注2)には直系血族及び兄弟姉妹が、互いに扶養する義務が記されています。「扶養」とは、主に金銭的援助を行うことです。

介護で生じる金銭援助も、法律に則れば直系血族や兄弟姉妹が行うことになります。

しかし親が高齢であれば、兄弟姉妹も高齢です。

兄弟姉妹も介護をされる側に回ることもあり、金銭的な協力は得にくいでしょう。自ずと負担者は子どもになり、あなたやあなたの兄弟姉妹が金銭援助を行うことになります。

ただし、扶養義務者には優先順位がありません。

誰が介護費用を負担するかは、当事者どうしの話しあいで決定します。兄弟間で押し付けあいが生まれないよう、介護への認識を共有しなければなりません。

親自身で介護費用を負担するため控除を確認する

親自身で介護費用を負担するため控除を確認する

介護の理想は「親自身で介護費用を賄うこと」です。足りないぶんを支払うことを考える前に、まずは「親の負担を減らす」工夫をします。

主に見直すべきは税金です。税金はその年の所得に応じて課税されます。課税金額を抑えるには、「所得からいかに控除(課税金額の減額)できるか」にかかっています。

フリーランスや自営業者の多くは、自分自身で確定申告を行っています。控除についての知識も豊富で、親を助けられる立場です。

本章の内容を参考に、あなたの目で「控除の見逃しがないか」を確認しましょう。

見逃しがちな控除

高齢者の多くは年金が収入源です。年金受給者には、毎年の確定申告の手間を省く「確定申告不要制度」が用意されており、以下の該当者以外は確定申告をする必要がありません。

  • 年金その他の収入金額が計400万円を超える人
  • 不動産収入や株取引の年金以外に20万円を超える収入がある人

確定申告を経験している場合、「控除」にも自ずと意識が向きます。書類を作るときに控除を入力(記入)するためです。

しかしそれ以外の人は、あまり控除に意識が向かないため、利用できる控除を見逃している可能性があります。

代表的なものは「医療費控除」「寄付金控除」「障害者控除」です。

該当するものがある場合、確定申告を行うことで課税金額を減らせます。年金収入の場合、所得税を源泉徴収した上で支給されるため、払いすぎている税金が還付されます。

控除条件を確認しアドバイスを

高齢者が見逃しがちな控除は以下のとおりです。条件を確認し、親の課税状況と照らしあわせましょう。該当する項目があれば、あなたから確定申告のアドバイスを行います。

種類条件
医療費控除納税者および生計を一にする配偶者や、その他親族のために支払った年間医療費合計が10万円以上(所得金額が200万円未満の場合は所得金額の5%以上)
寄付金控除・ふるさと納税を行った場合
・国や地方公共団体、特定公益増進法人などへの寄付を行った場合※いずれも2,000円を超える部分を控除
障害者控除納税者および生計を一にする配偶者や扶養家族が所得税法上の「障害者」に当てはまる場合※自治体の基準により、65歳以上の人に要介護認定1〜5が出た場合、障害者控除対象者に該当する場合があります。

税金が軽減されることで、親の家計は楽になります。そのぶんを介護費用に回せば、親のお金だけで費用を賄えるかもしれません。そうすれば、あなたが介護費用の捻出に頭を悩ませる必要はなくなります。

高額な介護費用からあなたを守る「世帯分離」

高額な介護費用からあなたを守る「世帯分離」

親だけでは介護費用を支払いきれず、あなたに負担が回ってきた場合、でき得る工夫で負担を軽くしましょう。ポイントは「世帯分離」です。

親を別世帯にすることで、親世帯の収入は減少します。

介護費用は「世帯所得」で大きく変わるため、現役で働いているあなたの収入が、介護サービスを受ける上で障壁になるのです。本章で世帯分離の知識をつけ、メリットを確認しましょう。

扶養が有効なのは親が元気な間のみ

あなたが会社員などを兼業し社会保険に入っている場合、親を扶養に入れている人も多いのではないでしょうか。なぜなら以下のメリットがあるからです。

  • 扶養対象者が増えるとあなたの所得税・住民税が安くなる
  • 親の年齢が75歳未満なら、親の健康保険料を0円にできる(75歳以上は扶養対象外)

しかしこれは親が元気な場合に限ります。介護にさいしてはむしろ世帯分離をしたほうが有利です。介護サービスを受けるさいの負担額は、世帯所得により変化します。

親を別世帯にしておかないと、あなたの所得を基準に高額な費用を負担することになります。

世帯分離は同じ家に住んでいても可能です。その場合、同じ住所に二人の世帯主がいることになります。

関連記事:親を扶養に入れるメリット・デメリットと具体的な手続き方法を解説

「高額介護サービス費制度」で自己負担限度額を抑えられる

「高額介護サービス費制度」で自己負担限度額を抑えられる

介護保険が適用されるサービスを受けると、1割〜3割の費用を自己負担します。

しかし自己負担額には上限が設けられており、それを超えた場合は払い戻しが受けられます。この制度のことを高額介護サービス費制度と呼びます。

高額介護サービス費は世帯所得で決定されます。親だけの世帯なら所得も低いため、判定基準が下がり、負担限度額を低減できます。

高額介護サービス費の基準

高額介護サービス費の限度額は以下の基準で設定されています。

条件月額限度額
①生活保護受給者等15,000円(世帯)
②世帯全員の市町村民税が非課税で、年金等の合計所得が年間で80万円以下15,000円(個人)24,600円(世帯)
③世帯全員の市町村印税が非課税ではあるものの、①②に該当しない人24,600円(世帯)
④市町村民税課税〜課税所得380万円未満44,000円(世帯)
⑤課税所得380万円〜690万円未満93,000円(世帯)
⑥課税所得690万円以上140,100円(世帯)

(この図表は、令和3年8月利用分から高額介護サービス費の負担限度額が見直されます | 厚生労働省 をもとに当社が作成)

「特定入所者介護(予防)サービス」を受けられることも

介護保険は保険が適用される範囲が限定されています。介護保険施設などに居住や滞在をした場合、居住費(滞在費)や食費は介護保険の給付対象外となり、自己負担をしなければなりません。

しかし所得が低い人は高額の支払いが難しいため、申請をすれば負担限度額が設定されるサービスがあります、これを「特定入所者介護(予防)サービス」と言います。

特定入所者介護(予防)サービスは、同一世帯に市民税を課税されている人がいると受けられません。「世帯非課税」が条件です。

特定入所者介護(予防)サービスの基準

特定入所者介護(予防)サービスには、年金などの所得に応じた細かな基準が設けられています。

<所得の基準>

段階所得の条件
第1段階・市民税が世帯非課税で、老齢福祉年金を受給している
・生活保護受給者
第2段階市民税が世帯非課税で、年金その他の合計が年間80万円以下
第3段階①市民税が世帯非課税で、年金その他の合計が年間80万円〜120万円以下
第3段階②市民税が世帯非課税で、年金その他の合計が年間120万円以上

設定される限度額例は次のとおりです。

<負担限度額(日額)の例>

段階従来型個室(特養等)従来型個室(老健・療養型等)食費
第1段階320円490円300円
第2段階420円490円390円
第3段階①820円1,310円650円
第3段階②820円1,310円1,360円

(この図表は特定入所者介護(予防)サービス費とは | 明石市 をもとに当社が作成)

フリーランスの人は専門の保険加入も検討を

フリーランスの人は専門の保険加入も検討を

フリーランスにとって自分の体は大切な資本です。病気や怪我で働けなくなると、その間収入は途絶えます。それを補償する保険に加入することは、自己防衛策として必須でしょう。

親の介護も同様に考えられます。フリーランスは自分自身で勤務時間を調整しやすいものの、親の介護と勤務が重なれば、休業せざるを得ません。

しかも病気や怪我とは違い、介護は長期化します。対策として、保険への加入が有効です。

親の介護まで補償する保険は多くないものの、損保ジャパンが提供する「フリーランス協会の収入・怪我・介護の保険」が親の介護にも特約で対応しています。

保険の条件は以下のとおりです。

<「フリーランス協会の収入・怪我・介護の保険」の「親孝行サポートプラン」>

補償対象者フリーランス協会の会員の親
支払対象要介護2〜5
引受年齢40歳以上79歳以下
条件要介護2〜5の状態が90日以上続いた場合、加入者の親に支払い(一回限り)
保険金額100万円〜300万円

毎月支払うの保険料は以下のとおりです。親が60歳以上の場合のみ掲載します。

<「親孝行サポートプラン」月額>

親の年齢/保険金額100万円200万円300万円
満60歳〜64歳190円370円550円
満65歳〜69歳400円800円1,190円
満70歳〜74歳850円1,690円2,530円
満75歳〜79歳1,770円3,540円5,300円

(参照この図表は フリーランス協会の収入・怪我・介護の保険 | フリーランス協会をもとに当社が作成)

親の年齢が80歳未満の場合は、万一の備えになりそうです。

ただし、利用には「フリーランス協会」の一般会員になる必要があり、年会費がかかります。入会のさいはメリットをよく見極めなければなりません。

さいごに

さいごに

親の介護は突然にやってきます。そのときに問題になりやすいのが費用面です。とくに親と離れて暮らしている場合、親の貯蓄や収入を知る機会はほとんどないでしょう。

いざ介護に直面したときに費用が足りず、捻出に四苦八苦するかもしれません。親や兄弟と介護に直面したときの費用負担を事前に話しあい、方針を固めておくことが大切です。

多額になりがちな介護費用は、工夫次第で抑えられます。世帯分離で親の世帯所得を減らした上で、利用できる公的サービスを申請しましょう。

知識を持ち適切にサービスを利用することで、親とあなたそれぞれの負担を軽減できます。

フリーランス・自営業者は会社の後ろ盾がありません。お金を守るのはあなた自身です。親の介護で生活が破綻しないよう、本稿を参考にあらかじめ有効な対策をシミュレーションしてください。

不安なことはDokTechが力になります。私たちは介護をしながら働くフリーランス・自営業者を応援しています。疑問がありましたら、お気軽にお問いあわせください。

参考文献

注1(参照 2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査 | 公益財団法人生命保険文化センター

注2(参照 民法第八百七十七条 |e-GOV法令検索

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DokTech編集部
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