ドッグマッサージサロンの開業ガイド|資格や運営コスト、成功の秘訣

「91%が犬の健康のために意識していることがある」「86%がペットの健康に関して悩んだ経験がある」とのアンケート結果もあるほど、犬の健康は愛犬家にとっての関心事です。この傾向はこれからますます高まるでしょう。犬のヘルスケア市場には、ビジネスチャンスがあふれています。なかでも犬に健康を、ドッグオーナーに安心を与えられるサービスとして注目されるのがドッグマッサージです。今回は独立・開業関連の情報を配信するDokTech編集部が、ドッグマッサージサロンの開業に必要なノウハウを、余さず解説しました。サロンの形態や資格、成功の秘訣もまとめます。

繁盛するドッグマッサージサロンを開きたい人は、ぜひ最後までチェックしてみてください。

ドッグマッサージは、リラックスや健康維持を目的にした犬用マッサージです。

心地よい刺激が犬の緊張や痛みを緩和し、生活クオリティの改善や体調不良の早期発見が期待できます。

多くの種類があるドッグマッサージのうち、主流とされる2つを詳しく紹介します。

ペット先進国・スウェーデンで始まったドッグマッサージです。もっとも歴史が古いといわれます。

スウェーデン式ドッグマッサージは、大型動物に施していた理学療法をルーツとします。

解剖学に基づき、犬の筋肉骨格に整形外科的にアプローチするのが特徴です。犬に多い関節病のケアに強い魅力があります。

国内では「ドッグケア インターナショナル マッサージ スクール(Dog One Ginza)」が統括し、手法を広めています。

人のマッサージでもなじみ深いツボ・経路の東洋医学と、西洋医学的観点からのリンパマッサージを融合させた手法です。

経絡・ツボマッサージで血や気の流れを改善し、リンパマッサージでリンパを流します。健康維持や病気からの早期回復効果が期待できます。

スキンシップを重視しており、犬と人とのコミュニケーションを重視したい人に人気があります。

一般社団法人日本ペットマッサージ協会が統括し、セラピストを養成しています。

ドッグマッサージサロンが開業できる、4つの形態を解説します。

  1. 自宅型ドッグマッサージサロン
  2. 店舗型ドッグマッサージサロン
  3. 複合型ドッグマッサージサロン
  4. 出張型ドッグマッサージサロン

それぞれに特徴やメリット、注意点があります。理想のドッグマッサージサロンを開業するにはどの形態が良さそうか、チェックしてみてください。

自宅の一角を改装し、ドッグマッサージサロンとして開業します。

<メリット>

  • 物件取得費用を節約できる
  • 家賃がかからない
  • 身の丈にあった規模で開業できる
  • 職住近接が叶い、家の用事と両立しやすい

<注意点>

  • 防犯面:自宅の場所を広く知らせなければならない
  • プライバシー:初対面の客も自宅にあげなければならない

固定費を抑えられ、プライベートと両立しやすい点が自宅型のメリットです。

「できるだけ費用を抑えて運営したい」「まずは開業してみたい」人に向いています。

自宅とは別にサロン専用の物件を借り、開業します。

<メリット>

  • イメージ通りの内装で開業ができる
  • 大型設備や機材を入れやすい
  • 集客しやすい立地にこだわれる
  • 住所を大々的に宣伝できる

<注意点>

  • 物件取得費や固定費がかかる
  • 失敗した場合にリスクが大きい

店舗型ドッグマッサージサロンは、クオリティの高い店舗を構えられます。

集客力の高い立地を選び、住所を大々的に打ち出して運営を軌道に乗せやすいでしょう。

本格的にドッグマッサージサロンを開業したい人に、おすすめの手法です。

ドッグマッサージサロンと物販を組み合わせた手法です。物販部門では、ペットグッズやペット雑貨、ドッグフード・おやつなどを扱います。

<メリット>

  • 物販で集客できる
  • 物販の顧客をマッサージに誘導できる

<注意点>

  • 初期費用がかかる
  • サロンと物販それぞれに人件費がかかる
  • 物販の調達・在庫管理の手間がかかる

サロンだけでは集客が難しい開業初期から、物販で集客できる点がメリットです。

部門が多い分、人件費と作業の手間がかかります。比例してコストもかかりやすい点に注意しましょう。

出張型は「オーナーの自宅に上がる」「サロンカーを用意し預かって施術する」の2形態あります。

<メリット>

  • 来店が難しい客層もターゲットにできる
  • 固定費を抑えられる

<注意点>

出張型は、犬をサロンまで連れて行くのが難しい客層もターゲットにできます。小さな子どもがいる家庭やシニア世帯、犬自身が年老いている場合にも重宝されます。

店舗を構えるよりも、費用を抑えやすい点もメリットです。サービスを知ってもらわないと依頼が入らないため、効果的な広告宣伝に工夫が必要です。

ドッグマッサージサロンの開業に必要な設備と、選び方のポイントを解説します。

項目 選び方・ポイント
内装 防臭・防水仕様がおすすめ。滑りにくい床材も◎
受付・決済関連 チャット受付やキャッシュレス決済があるとよい
ベッド・マットレス 施術しやすい高さ、洗濯しやすい素材を選ぶ
ドッグケージ 預かる犬の大きさにあわせて用意する
逃走防止柵 施術スペース出入口と店舗入り口の2か所にあると安心
待合用の椅子 送迎のドッグオーナーの待合用
マッサージに必要な道具 施術手法に合わせて、アロマオイルやクリームなど

営業関連の設備・備品も用意します。

視認性の高い看板やショップカード、チラシを作成しましょう。

ホームページやSNSを開設し、サロンからの情報発信や問い合わせ対応ができるようにします。

【POINT】
店舗を借りての開業したい人は、「犬/サロンOK」の条件を満たす物件を探しましょう。「サロンはOKだが、動物はNG」という物件もあるため、不動産会社によく相談してください。

SNS運用のコツは「SNS集客7つのコツと成功事例!口コミを生み出すポイントも解説」をご覧ください。

ドッグマッサージサロンの運営にかかるコストを解説します。

大きなコストとなる店舗家賃は、立地・規模によって異なります。下表は15坪ほどのサロンを開業した場合の概算コストです。

項目 コスト目安
家賃 10万~30万円
光熱費 15,000~2万円
消耗品費 5,000~1万円
広告費 5万~20万円

ドッグマッサージはトリミングと異なり、水道代やシャンプー代がかかりません。日々消耗する項目にかかる費用を抑えやすい点がメリットです。

もっともコストがかかるのは、広告費です。宣伝はできるだけ自分で手掛け、良い口コミが広がるサービスを心掛けるとコストを抑えられます。

ドッグマッサージセラピストを名乗れる、代表的な4つの資格を解説します。

ドッグマッサージセラピストの国家資格はありません。民間資格の取得を通じ、犬の身体やドッグマッサージの手法を詳しく理解しましょう。

資格はドッグオーナーに、専門家の信頼性を訴求する役目を果たします。セラピスト資格がなくてもドッグマッサージサロンの開業は可能ですが、資格を保有していたほうが有利です。

認定Dog Massageセラピストは、スウェーデン式ドッグマッサージを施術できる資格です。

ドッグケア インターナショナル マッサージ スクールが主催します。

<学べる内容>

  • ドッグマッサージ実技
  • 筋肉学
  • 骨格学
  • 病気学
  • トリガーポイント(痛みの引き金になる箇所)
  • ストレッチ

<受講期間>

3か月(全12 回)+フォローアップ

<受講料>

46万2,000円(税込)

認定Dog Massageセラピストは、東京・銀座にある校舎に通学し学びます。

ドッグマッサージサロンを開業するほか、動物病院や犬の保護活動、動物看護の場で活躍する卒業生もいます。

JPMA認定ペットマッサージセラピストは、東洋医学式のドッグマッサージを施術できるようになる資格です。

日本ペットマッサージ協会が主催しています。

資格は「公式アカデミック基礎コース」「公式アドバンス応用コース」の2段階で取得します。

公式アカデミック基礎コース 公式アドバンス応用コース
内容 基礎解剖学基礎東洋医学論基礎リンパ理論症状別実践テクニック 各種病気の症状病気予防のためのマッサージ法ビジネス論健康管理法
期間 1日間 2日間
受講料(税込) 25,300円 50,600円認定受験料:9,900円

JPMA認定ペットマッサージセラピストは、動物全般に関する知識を習得できます。

セミナーは東京や大阪を中心に定期的に開催されており、短期間の受講で有資格者になれます。

一般財団法人 日本能力教育推進協会が主催するペット関連資格が、ペットセラピストです。

犬・猫を中心に、専門知識を使って動物のストレスを解消し、生活の質を高める専門家を養成します。

<学べる内容>

  • 犬・猫の歴史、特徴・性格
  • 健康管理
  • 応急処置
  • 食事療法
  • しつけ
  • マッサージ など

<受講期間>

3か月

<受講料>

49,600円(税込)

※ ネット申し込みは39,600円

カリキュラムを履修し、認定試験の合格を経てペットセラピスト資格が認められます。

カリキュラムも認定試験も通信で受講できるため、通学が難しい人にもおすすめの資格です。

ドックセラピストアドバイザーは、日本ドッグセラピスト協会が主催しています。犬の健康予防やストレス解消を目的に、アロマを使ったマッサージ手法を学べます。

<学べる内容>

  • ストレスのメカニズム
  • アロマの活用法
  • ホームケアのやり方
  • マッサージ実技
  • ビジネススキル など

受講形態は「オンライン」「通学(マンツーマン)」の2種類です。

オンライン基礎コース 通学(大阪)
受講期間 1か月/5か月 1単位・2時間を24単位(日時は応相談)
受講料(税込) 66,000円 435,600円

受講後、開業を目指す人を対象とした開業相談も開催しています。

ドッグマッサージ以外にも、さまざまな関連資格があります。

目的 受講期間 受講料
ウォーターケアセラピスト(水中療法) 外科疾患・神経疾患の改善 2か月(全8回) 24万円
動物介護リハビリヘルパー 高齢犬特有の疾患ケア、介護ケア 3か月(全12回) 22万円
ドッグマッサージ インストラクター  ドッグマッサージを指導者し、広める 2か月(全8回) 24万円

※ いずれも主催はドッグケア インターナショナル マッサージ スクール

ドッグマッサージサロンには、動物取扱責任者を配置しましょう。

動物取扱責任者とは、動物の販売や保管、訓練などの営業(第一種動物取扱業)の登録申請に必要な人物です。

サロンオーナーが動物取扱責任者となっても構いません。ただし、一般の人が動物取扱責任者になるには実務経験が必要です。

実務経験をこれから積むより、要件を満たす人を採用したほうがスピーディーに事業展開できます。

<動物取扱責任者の要件>以下1~4のいずれかを満たす①獣医師免許を取得している②愛玩動物看護師免許を取得している③半年以上の実務経験と、専門教育期間(1年以上)を卒業

④半年以上の実務経験と、専門団体による資格試験を取得

(※ 参照:動物取扱責任者等|東京都保健医療局)

ドッグマッサージは、ペットビジネスでも新しい分野です。国や地方自治体が定める、第一種動物取扱業者の具体例にはあがっていません。

一方で、近年は動物を取り扱う業者に対する世間の視線が厳しくなっています。

動物と真摯に向きあうサロン姿勢を見せるために、愛犬を安心して預けられると感じてもらうためにも、動物取扱責任者の配置は重要です。

ドッグマッサージサロンを開業し、繁盛店に育てる秘訣を3つ解説します。どんなに良いセラピストがいても、ドッグオーナーに知ってもらわなければ集客できません。

サロン成功の秘訣と聞いて「マッサージのテクニック向上」「ワンちゃんに好かれるセラピスト」と思い浮かんだ人にこそ、読んでいただきたい章です。

開業したら、ドッグマッサージサロンの営業宣伝に力を入れてください。

最適な宣伝方法は、サロンの形態によって異なります。

<サロン形態と宣伝方法の考え方>

◎ 出張型サロン

出張可能なエリア全体に周知する必要があります。

Webを活用し、広く知ってもらう活動に力を入れましょう。

◎ 店舗型サロン

店舗の場所の認知を最優先にします。

店舗周辺にチラシを配布すると同時に、MEO(マップ検索エンジン最適化)施策を徹底します。

◎ 自宅型サロン

近所のワンちゃんに施術体験を無料で行い、近隣のドッグオーナーからの口コミ集客を狙います。

すべての形態で力を入れたいのが、SNSの活用です。InstagramやTikTokで施術中のリラックスした表情や室内の様子を投稿します。

「安心して犬を預けられる」とドッグオーナーに感じてもらい、来店につなげるのが目的です。

リピーターが増えるほど、顧客の安定確保が可能になります。

サービス内容を知っているリピーターには宣伝コストがかからず、口コミで新規客を紹介してくれる可能性もあります。

満足してもらえるサービス品質・接客を前提とした上で、繰り返し利用したくなる仕掛けを用意しましょう。

<リピート獲得の仕掛け例>

  • 2回目・3回目利用の特典や割引
  • リピーター向け予約優先権
  • LINEを使った簡便な予約方法の提供

多くのドッグオーナーに訴求して来店を促し、収入を安定させるには事業の柱を複数作れないか考えましょう。

ドッグマッサージをメインに、派生的にビジネスを展開する手法がおすすめです。

部門ごとに集客できれば、サービスの相互利用による収益アップが期待できます。

<ビジネス展開のアイデア>

  • トリミングサロン
  • 有料ドッグラン
  • 犬の幼稚園・保育園
  • ペットホテル
  • 物販(マッサージ用品、フード・おやつ、おもちゃ・雑貨)
  • ドッグマッサージセラピストの養成講座を開講
  • 自宅でできるマッサージ講座を開講

関連記事:ペット向けサービスの「あったらいいな」を柴犬飼いが真剣に考えてみた

本格的にドッグマッサージサロンを開業する前に、副業でチャレンジしてはいかがでしょうか。

自宅を改装したサロンや出張型サロンなら、初期費用を抑えてドッグマッサージサロンを開業できます。

はじめのうちは週末だけの営業でもOKです。週末が休みのドックオーナーをターゲットにすれば、平日に閉めても大勢に影響はありません。

できる範囲で開業し、反響や集客の様子を見ても良いでしょう。

記事を参考にまずは資格を取得し、副業でできる範囲からドッグマッサージサロンを始めてみませんか。

「愛犬にはいつまでも元気でいてほしい」「シニア犬になっても一緒に散歩に行きたい」と考えるドッグオーナーにとって、犬の健康は高い関心事です。

ドッグマッサージはリラックス効果やストレス解消、病気の早期発見に効果が期待できると、愛犬家から注目を集めています。

トリミングほど一般的になっていない今こそ、ビジネスチャンスです。関心が高まりつつある今、ドッグマッサージサロンの開業に最適なタイミングでしょう。

資格取得を皮切りに、サロンの開業に向けて準備を始めてみませんか。

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