フランチャイザーが行うべき支援|加盟店から信頼されるFC本部のサポート内容
更新日:2023.10.3
投稿日:2023.1.5
フランチャイズ事業本部構築についての記事を、前編・後編にわけてお届けします。後編は加盟店の信頼を得るために行うべき、フランチャイズ事業本部(以下、FC本部)の支援内容がテーマです。
FC本部を構築する人は、自社の名前を全国に広め、ブランド力を強化したいと考えるでしょう。それには多数の加盟者を集め、経営を安定させなければなりません。
その鍵を握るのは、
・魅力的なフランチャイズパケージ(※注1)の構築
・加盟店への個別支援の充実
です。このうち加盟店への個別支援は、前編『フランチャイズ事業本部の役割と本部構築に必要なこと』で説明していますのでご覧ください。
ここでは魅力的なフランチャイズパッケージをつくりあげるために、開業前・開業後に行う支援内容に絞って説明します。
本稿で紹介する支援内容は、実際にDokTechの運営元である「こどもプラスホールディングス」が採用しているものです。
弊社は障がいのある子ども達を支援する「放課後等デイサービス」をフランチャイズ展開しており、2016年からの短期間で190もの加盟店を成功に導きました。
成功の秘訣は、弊社が誇る豊富な支援内容です。福祉業界初心者でも円滑に開業し経営を続けられるよう、効果を検証し策定しています。
弊社の事例を参考に支援内容を決定すれば、加盟者を惹きつけ、安定した経営を支えるフランチャイズパッケージができ上がるでしょう。
手間と時間がかかる大変な作業だからこそ、成功事例を知ることは大切です。本稿をフランチャイズパッケージ作成の一助としてお役立てください。
※注1)「フランチャイズパッケージ」とは、FC本部が加盟店に行う支援一式のことです。
目次
加盟店の円滑な開業に向け行う支援
開業支援はFC本部にとって腕の見せ所です。知識や経験がない人でも、FC本部の力で開業まで円滑に導かなければなりません。
そのために必要な支援内容は次の3つに大別されます。
- 開業支援(テナント選定や書類準備など)
- 人材採用や育成のサポート
- 集客支援
本章では一つひとつ具体的な支援内容を挙げながら説明します。
開業支援
まずは加盟者の開業をトータルでサポートする、専属の担当者をFC本部が用意します。「この人がいれば安心」と思ってもらえるよう、開業手続きに深い知識を有し、コミュニケーション能力の高い人材を配置しましょう。
加盟者と二人三脚で進められる状態を保ちながら、以下の支援を進めます。
規約や商圏保護義務などトラブルを未然に防ぐ説明
加盟契約時には契約書類を一つひとつきっちり説明します。とくに加盟者に守ってほしい規約は、丁寧に説明し同意を得なければなりません。
「商圏保護条項」の説明も忘れずに行います。商圏保護条項とは、加盟店の商圏を守るための決まりごとです。すでに加盟店が進出している近隣には、新しい店舗を出せません。
したがって、加盟者の希望している出店場所が、既存加盟店の商圏と重なる場合、希望に添えない事態が発生します。
FC本部は商圏保護義務を守る責任を負っていること、そして出店すれば「あなたの商圏も守られる」ことを説明し、理解を得ましょう。
テナントに関するコンサルティング
契約直後から開始するのが、テナントに関するコンサルティングです。店の場所が確定しなければ書類手続きを進められないため、なによりも先に取り組みます。
ただし物件選定は慎重に行わなければなりません。事業の行いやすさは、開業場所によって変わります。「儲からない場所」に出店してしまい、後々後悔しても遅いのです。
FC本部では、出店のミスを防ぐため、徹底したリサーチを行います。リサーチ内容は、
- 商圏リサーチ
- 競合他社のリサーチ
です。
リサーチでは、FC本部の過去のデータがものを言います。これまでの業界研究や市場分析の実績を活かせます。さらに組織力を活かし、電話やwebを駆使した専門的なリサーチ・取材もできます。
加盟者一人の力でリサーチを進めるには時間・コストがかかり、調べられる内容も限界があります。適切な方法で調査し、満足のできる情報が集まるかも定かではありません。
FC本部の組織力を活かしたサポートで、加盟者にフランチャイズ事業の強さを実感してもらいましょう。
リサーチ手法の詳細は『開業前に行うリサーチが開業後の経営の成否をわける』をご覧ください。
内装や店舗づくりの指示
内装や店舗づくりにも、FC本部が介入することをおすすめします。内装やレイアウトを揃えれば、フランチャイズチェーン全体の統一がとれ、各加盟店が一体となりブランディングできるからです。
業種によってはFC本部の介入が必須の場合もあります。内装や設備などに法律がかかわる業種です。たとえば飲食店の「内装制限」がこれに該当します。
内装制限とは、店を火事から守るため、壁や天井の仕上げ材にかけられる制限です。燃えにくい材質を採用するよう、建築基準法で規定されています。
これを知らずに加盟者の独断で進めてしまうと、建築基準法を満たせず開業できない事態に陥ります。FC本部の責任で、内装の指示を出さなければなりません。
なお内装を指示するさい、工事の手間を減らせるコツがあれば、それも同時に伝えましょう。
たとえば、
- 居抜き物件を案内する
- パーティションなどで部屋を分割する方法を教える
などです。時間とお金をかけず効率的に開業でき、加盟者の負担を減らせます。
開業に必要な書類の提供と提出に向けたアドバイス
開業には多くの書類が必要です。税務署や都道府県、市町村など、決められた場所に決められた書類を提出しなければなりません。
とくに許認可事業の場合、地方自治体に提出する書類の数が多い上、それが正確でなければ開業の許可が下りません。書類準備の煩雑さから解放されることは、フランチャイズ事業で加盟者が受けられる大きなメリットです。
FC本部は、加盟者が迷うことなく書類の提出を終えられるよう、次の工夫を行います。
①行動リスト・チェックリストの提供
「いつまでに」「どこに」「なにを」提出するか記した行動リストと、進捗を記録するチェック表を作成し、加盟者に渡します。必要な手続きの全体像がわかるため、加盟者は煩雑さを感じることなく、着実に一つひとつをこなせます。
②書式の提供
税務署や地方振興局など書式が用意されているものは、あらかじめ揃えておき、記入例を示した上で加盟者に手渡します。
書式が用意されていないものは、FC本部で作成します。ワードやエクセルでファイルをつくり、加盟者と共有しながら進めていけると良いでしょう。
③進捗の確認と頻繁なフォロー
電話やチャットなどで頻繁に連絡を取りあい、加盟者の進捗や、提出の忘れがないかを確認しましょう。書類は正確さが大切です。ファイルを共有しながら、添削を繰り返します。
人材雇用・育成サポート
必要な人材を円滑に雇用・育成できる仕組みをつくることも、FC本部の役割です。加盟者が全国どこで開業しても人材採用に困らず、採用後の研修も受けられる環境を整えなければなりません。
人材雇用のアドバイス
フランチャイズ事業ではネームバリューを使用できるものの、それだけで人材が集まるほど甘くはありません。とくに資格保有者の雇用は困難がつきまといます。
また、大学や専門学校が多い大都市と地方都市とで、採用の難易度に差が生まれやすい問題もあります。地方都市では資格保有者の絶対数が少なく、採用の困難が大きくなりがちです。
FC本部は加盟者が苦労しないよう、次の順で採用計画を提案します。
①求人原稿の効果的な書き方の指導
少しでも訴求力のある求人原稿が書けるよう、ポイントを指導します。
②求人を出す職種の幅を広げる
絶対数の少ない資格の場合、その資格に近い条件の「よりメジャーな資格保有者」を採用するよう働きかけます。ただし、採用後には会社が出費をして、必要な資格に挑戦してもらわなければなりません。
実際、放課後等デイサービスでは「児童発達支援管理責任者」(児童福祉サービスで児童の個別支援計画を作成し提供する責任者)の代わりに、よりメジャーな「サービス管理責任者」(障がい福祉サービスで利用者の個別支援計画を作成し提供する責任者)を採用するケースもあります。
その場合、採用後に必要要件を満たしてもらうよう働きかけます。
詳しくは『無料求人広告で安定的に人材を確保する裏技&適切な人材配置の方法』をご覧ください。
③職業紹介サービスへの登録
職業紹介事業は、企業と求職者をマッチングするサービスです。加盟者がサービス登録を行うと、事業者が最適なマッチングを行い候補となる人材を提案してくれます。求人サイトでもこの仕組みを利用しているサイトが増えたため、加盟者の利便性も高いでしょう。
開業前研修の実施
研修には次の2種類を用意します。
- オーナー向けのもの
- 全従業員に向けたもの
とくにオーナー向けの研修は大きな意味を持ちます。フランチャイズ事業は業界未経験者でも成功に導けてこそ、真価を発揮します。それには体系化された研修が必須です。
研修の内容は、前編『フランチャイズ事業本部の役割と本部構築に必要なこと』で説明していますのでご覧ください。
なお、研修は提供の仕方にも工夫が必要です。
加盟者の居住地は日本全国です。すべての加盟店にFC本部まで足を運んでもらい、複数の研修を受けてもらうのは現実的ではありません。
オンラインで提供できるよう設備を整え、ネット上で視聴してもらえる形が理想です。映像に残せば何度でも繰り返し使用できるため、加盟店が新たな従業員を雇ってもわざわざ研修を用意する手間がかかりません。
集客支援
FC本部は事業に成功するまでにさまざまな営業手法を試し、ノウハウを蓄積しています。それを活かすには、次の3つの支援を行うと良いでしょう。
- 営業ツール(名刺やパンフレット)の提供と営業先の指定
- 体験会や見学会などの実施
- ホームページの用意と運用支援
営業ツールの提供と営業先の指定
加盟者にとって開業前から名刺やパンフレットが揃うことは大きなメリットです。開業準備と並行し、営業活動に出られるからです。集客が円滑に進み、開業直後から順調な滑り出しが期待できます。
FC本部では最低でも開業の2ヶ月前までに、名刺やパンフレットなどを加盟店に送付します。
全国の加盟店で共通のフォーマットを使用し、必要な部分だけを変更して使用すると良いでしょう。追加の印刷は常にかけられる状態にしておきます。
なお物件選びのさい、見込み客の多いエリアをリサーチしています。
そのエリアから営業に回るべき場所をピックアップし、加盟者に示しましょう。確実に見込み客がいる場所だけに絞り込むことで、加盟者が闇雲に動くのを防ぎ、営業効果を上げられます。
体験会・見学会などの実施
店舗準備が済んだころを見計らい、体験会や見学会も開催します。職員研修を終えたタイミングがベストです。
FC本部からはスーパーヴァイザー(※注2)を派遣します。開店前は加盟者や職員も突然の業務に戸惑うはずです。SVが見本となり業務の流れを実演することで、最終的な研修の役割も果たせます。
チラシやwebを使い、開催は広く周知します。来場者の情報は今後の集客への参考にしましょう。
※注2)スーパーヴァイザーは本部所属の管理職員です。加盟店を巡回しながら、運営アドバイスや管理業務を行います。
ホームページの用意と運用支援
ホームページは開業の2ヶ月前までに用意しましょう。紙媒体と同様、全国の加盟店で同一のフォーマットを使用し、必要な部分を変更して提供します。
ホームページ管理で大切なことは、「オーナーまたは職員による頻繁な更新」です。せっかくのホームページも、更新されないまま停滞していたらアクセスが伸びません。新しい情報を積極的に流し、広く開業をアピールします。
そのために、ホームページの作成にはWordPressなどのCMS(コンテンツ管理システム)を利用することをおすすめします。
CMSは雛形が用意されており、ホームページ構築に必要な知識がなくても運用可能な仕組みです。FC本部が簡単なマニュアルを用意すれば、簡単にページを管理・更新できます。
さらにアクセス解析などのサービスも、FC本部が提供できると良いでしょう。詳細は第2章でお伝えします。
店舗開業後に継続的に行う支援
開業後の支援テーマは「事業の安定」です。いかに充実した支援を提供し、安定した経営を実現させるか、FC本部の力が試されます。
支援内容は、
- 集客や売上の分析と業務改善サポート
- アクセス解析やSEO対策による集客・広報支援
- 定期的な研修の実施
- 新たな商材の開発と提供
- 組織づくりのノウハウ提供
などです。
本章ではこれらの具体的内容を説明します。
集客や売上の分析と業務改善サポート
事業の成功には「分析」が欠かせません。市場分析、商圏分析、競合分析など、さまざまな分析を行います。FC本部はそれで結果を出してきた「分析のプロ」です。
その手腕を活かし、各加盟店の経営状況も分析し、必要な業務改善サポートを行います。
たとえば集客で苦労しているものの、客単価が高い傾向が見られる場合、現在の営業方法を踏襲しつつ、集客に向けイベントやキャンペーンなどの提案を行います。
加盟店ごとの特徴を見つけ出し、問題のある箇所に重点的な個別支援をします。
スーパーヴァイザーの重要性
業務改善サポートには、SVの存在が欠かせません。店舗を直接訪問し、運営に必要な書類の整備や、商品(サービス)の安全性、適切な提供の確認など、オーナーが気づかないミスまで拾い上げます。
たとえば飲食店で食品の安全な管理を怠ると、食中毒など重大な事故に繋がりかねません。SVはその兆候がないか確認し、少しでも気になる点があれば指導する役割を果たします。
店舗が抱える困難に気付けるのもSVです。オーナーが気づかない問題や、顕在化していない問題を本部に持ち帰ることで、各加盟店に個別の業務改善サポートができるようになります。
アクセス解析の分析情報などを活用した集客・広報支援
ホームページの効果を分析し、必要な措置を講じていくのもFC本部の役割です。
「アクセス解析」や「SEO対策(※注3)」は希望する加盟店に専門業者を紹介する手もあります。しかしFC本部に卓越した分析力があるのなら、自社で行える体制を整え、サービスに組み込むと良いでしょう。
詳しい手法は『なぜ集客に失敗するのか?効果的に新規顧客を獲得する方法』をご覧ください。LINEを使った集客や、オンライン広告の出稿についても言及しています。
※注3)SEO対策とは「検索エンジン最適化」のことです。これを行うと、GoogleやYahoo!で検索上位に表示されやすくなります。
定期的な研修の実施
開業後の研修は「月に一度」など開催時期を決め、それぞれにテーマを設けます。開業前と同様に、オーナー向けと職員向けの2種類を用意し、それぞれ実施しましょう。
提供方法はオンラインをおすすめします。可能であれば、全国の加盟店が一堂に会し問題や改善事例を共有できる機会があると良いでしょう。お互いの失敗に学び、成功に倣えます。
新たな商材の開発と提供
FC本部は「開発部」としての役割も重要です。消費者からは「より良いもの」「より便利なもの」が求められます。今ある商品やサービスのままとどまっていると、消費者離れを起こす可能性もあります。
FC本部は消費者の期待に応えられるよう、開発を続けなければなりません。市場分析と商品開発は繋がっています。市場分析の結果を、新たな商品開発に活かしましょう。
多店舗経営を視野に入れた組織づくりのノウハウ提供
一つの店舗で成功を収めたら、加盟店には積極的に多店舗経営を提案します。加盟店が地域拠点となり、さらなるブランド力の強化と地域でのシェア獲得が期待できます。
ただし、多店舗展開は組織がしっかりしていることが前提です。職員間で目標や経営方針が共有できており、どの職員に新店舗を任せても安心できる状態でなければなりません。
状態はSVが見計らいます。日々の訪問で店舗を観察し、最適なタイミングで多店舗展開を提案します。
さいごに
FC本部が行う支援は、大きく開業前と開業後にわかれます。内容をしっかりと理解し、魅力的なフランチャイズパッケージを構築しましょう。
<開業前>
■開業支援
- 規約や商圏保護義務などトラブルを未然に防ぐ説明
- テナントに関するコンサルティング
- 内装や店舗づくりの指示
- 開業に必要な書類の提供と提出に向けたアドバイス
■人材雇用・育成サポート
- 人材雇用のアドバイス
- 開業前研修の実施
■集客支援
- 営業ツールの提供と営業先の指定
- 体験会・見学会などの実施
- ホームページの用意と運用支援
<開業後>
- 集客や売上の分析と業務改善サポート
- アクセス解析の分析情報などを活用した集客・広報支援
- 定期的な研修の実施
- 新たな商材の開発と提供
- 多店舗経営を視野に入れた組織づくりのノウハウ提供
これらの支援を盛り込んだフランチャイズパッケージならば、業界未経験の加盟者でも円滑に開業に導けます。「安定した事業を保障するFC本部」として良い評価を集められるでしょう。
私たちこどもプラスホールディングスはこのフランチャイズパッケージを使用し、短期間で成功を収めてきました。現在加盟店は全国で190拠点あり、いずれの店舗も好調な経営を続けています。
実際にFC本部としての経験と実績を有しているからこそ、皆様に当事者目線でさまざまなご案内が可能です。
本部構築についてより詳しく知りたい方や、業種ごとの対策を知りたい方は、どうぞお気軽にお問いあわせください。
著者情報
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フランチャイズ経営者やフリーランス、法人役員など、多種多様なキャリアをもつメンバーでお届けしています。
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