顧客・社員を守る!対外的トラブルを解決する危機管理方法
更新日:2023.10.3
投稿日:2022.12.27
会社経営を続けていると大小さまざまな困難に直面します。リスクを予測し先手を打っても、トラブルを100%防ぐのは不可能です。
人間が仕事をする限り、どんなに対策をしてもヒューマンエラーは起こります。それが大きな不祥事に繋がることも、ないとは言いきれません。
直面するトラブルの規模が大きいほど、その対応には会社の姿勢が現れます。とくに顧客や世間を巻き込んだ「対外的なトラブル」は、普段から危機管理ができていないと、その場しのぎの対応で信頼を損ないます。
大切なのは「トラブルは起こるもの」という認識に立ち、解決法をシミュレートすることです。
そこで今回は、対外的なトラブルを解決する危機管理方法を、DokTechの経験から説明します。
DokTechの運営母体である「こどもプラスホールディングス」は、障がいを持つ子ども達に医療的・教育的サービスを提供する「放課後等デイサービス」をフランチャイズ展開しています。
放課後等デイサービスは社会福祉事業のため、対応を誤ると顧客の信頼を失うだけでは済みません。自治体から処分が下され、教室の運営が不可能になります。他業種よりも危機管理能力が高く問われるからこそ、トラブルへの対応力を磨きぬいています。
ここで紹介する解決法は、どのような業種にも適用できます。本稿をお読みいただくことで、いざというときに慌てずに対処でき、顧客や社員、会社を守ることができるでしょう。
目次
対外的なトラブルの事例と対応の心得
顧客や世間を巻き込んだトラブルは、頻繁に起こるものではありません。しかし、もしも起これば大きな事件や事故に繋がる危険性があります。
たとえば、
- 顧客に怪我や損害を与える
- 従業員が犯罪をおかす
- 業務中に事故を引き起こす
- 事務所が火事になる
などです。
これらのトラブルには、会社の「社会的責任」が問われます。万一対応を誤ると、その責任を果たしていないとみなされ、最悪の場合は廃業にまで追い込まれることもあります。
本章で対外的なトラブルの事例を知り、対応への心構えをしましょう。
廃業にまで発展することもある対外的なトラブル事例
大きな不祥事を起こした会社の会見を見て、不快感を抱いた経験はありませんか?
不祥事の内容そのものよりも、
- 具体的な解決策が示せていない
- 顧客ではなく、自社を守ることばかりに意識が向いている
- 仕事へのプロ意識が低い
- 起こした事案についての責任意識が感じられない
など、トラブルに対応する姿勢に、欠点が目立つのです。
そのような会社は、急なトラブルを想定した対策を怠ってきたのでしょう。あたふたしてどう対処すべきかわからず、その場を取り繕う誠意のない対応で済ませようとします。
本来はそうでなかったとしても、世間はその対応こそが「会社の日常の姿」だと判断します。普段から顧客を大切にせず、プロ意識も低い上に責任も取れないと受け取られ、批判されるのです。
一度付いてしまった悪いイメージを払拭するのは容易ではありません。失った顧客は戻らず、廃業以外に選択肢がなくなるかもしれません。
不正により廃業にまで追い込まれた事例
実際に不正により顧客が離れ、廃業にまで追い込まれた、ある高級料亭の事例を挙げます。
同社は2007年に賞味期限切れや産地偽装問題が発覚し、営業を停止しました。
役員の入れ替えで再建を図った矢先、今度は客の食べ残しを提供していたことが発覚し、完全に信頼を失います。結果として2008年5月に廃業に追い込まれました。
また、同社は悪質なトラブル対応でも顧客の信頼を失っています。事件発覚当初、パート従業員に責任をなすりつけ、解決を図ろうとしたのです。後に役員の関与が発覚し、世間の批判を浴びました。
トラブル対応で信頼を取り戻すどころか、火に油を注ぐ対応で、自らを倒産に追いやったのです。
社会福祉事業では行政処分が下される
私たちが携わる放課後等デイサービスは、自治体から許可を得て運営する社会福祉事業です。万一事故が起きた場合、社内だけで処理するわけにはいきません。自治体への報告義務があります。
もしも報告書の未提出や事故の隠蔽、事業所側の明確な不備があった場合、新規利用者受け入れの一時停止や、許認可の取り消し処分が下されます。
最近も、事故により新規利用者受け入れの一時停止処分が下された事例があります。
2021年に中国地方の放課後等デイサービスで、男児が施設近くのため池で亡くなった事故です。職員が目を離した隙に男児が教室を抜け出してしまい、大事故に発展しました。
この事故で、施設は「開口部から利用者が外に出ないよう、適切な措置を講じなかった」との理由で、児童福祉法違反を根拠に県から処分を下されています。
放課後等デイサービスにおいて、法令順守は運営だけでなく、子ども達の命にさえかかわります。私たちもこの痛ましい事故に学び、襟を正し運営にあたっています。
リスク顧客をの重要性
対外的なトラブルはいつなんどきやってくるかわかりません。日々の売上ばかりに気を取られ、足元のリスクを見つめずにいると、大きなトラブルに見舞われたときに対処できません。
リスクマネジメントとは
トラブルに備えた組織的な取り組みを、「リスクマネジメント」と呼びます。リスクマネジメントの基本は、自社に起こり得るトラブルを把握することです。
たとえば、
- 地震や火事などの災害
- 経営者や従業員の死亡
- 盗難
- 商標の侵害
などは、どの会社にも共通して起こり得るトラブルです。加えて、各業種特有のトラブルもあります。
飲食店を例に取ると、
- 食中毒の衛生リスク
- 火災・爆発などの火災リスク
などが挙げられます。
これらのリスクをあらかじめ把握し、万一起きてしまった場合にどれくらい損失を被るか、影響をシミュレートします。
そして、どうすれば事前にリスクを避けられるかを考え、有効な対策を講じます。危機管理マニュアルをつくり、社内で対策を共有すると安心です。
リスクマネジメントができていれば、万一のトラブルがあっても被害を最小限に食い止められます。
逆にそれができていないと、前節でご紹介したように、トラブル一つで企業活動を継続できない事態に陥る可能性があります。
1リスクマネジメントにおける4つの心得
リスクマネジメントを行うときには、4つのポイントを意識すると良いでしょう。とくにこれらは、対外的トラブルが発生したときに重要な心構えです。これらを心得た上で対応にあたれば、顧客を繋ぎ止められる可能性があります。
①自分たちだけは大丈夫だと思わないこと
人間が仕事を推進する限り、「絶対」はありません。自分たちだけは大丈夫だと過信していると、大事故を起こすこともあります。
②トラブル発生時は会社よりも顧客を守る
トラブル時に自分たちの会社を守ろうとする思惑ばかりが透けて見えると、顧客や世間の反感を買います。顧客を守ることを最優先に行動しなければなりません。結果としてそれが顧客を繋ぎ止め、会社を守ることにも繋がります。
③普段から仕事に誠実であること
いつも誠実に仕事を行っていれば、自然とプロ意識や責任感が生まれます。万一想定外のトラブルが起きても、不誠実さで顧客を失うことはないでしょう。
④トラブル対応でその場しのぎの姿勢を見せないこと
その場しのぎの対応は不自然なため、顧客に見透かされます。リスクマネジメントができない会社とみなされ、顧客離れを起こすでしょう。万一に備え対策を行っておけば、トラブル発生後すぐに解決案を提示できます。顧客の理解も得やすいでしょう。
対外的なトラブルを解決する方法
対外的なトラブルに対応する心構えが出来たら、起こり得るトラブルを想定しながら、対応方法をシミュレートします。
本章では、シミュレートに効果的な方法と、実際にトラブル対応にあたるときの手法を説明します。
効果的なシミュレートには同業者のトラブル事例が役立つ
対外的なトラブルに備えるには、同業他社の事例に習うのが一番です。
その職種だからこそ起こりやすい問題がわかり、解決方法も参考にできます。全国展開するチェーン店では、他店の事例を参考にするのも良いでしょう。
集めた事例の活かし方
こどもプラスでは、全国のフランチャイズ加盟店から寄せられたトラブルを記録し、その解決法を全店で共有しています。
これまでに以下のトラブルが報告され、解決策を提案しました。
- 幼児のブロック誤飲
未就学児を対象とする児童発達支援の教室で起きた事故です。幼児が在籍する教室に、細かなものの管理や、小さな子どもへの療育体制見直しを指示しました。 - 鉄棒からの落下事故
軽い運動をしながら体の機能を引き出す「運動療育」の実施中に起こった事故です。発育状態や健康状態を見誤らないよう細心の注意を払うことと、小さな子どもへの補助方法の変更を提案しました。 - 事業所の火事
食洗機の電源を入れたままにしたことで、教室が火事になりました。幸い子ども達に怪我はなかったものの、教室が一時使えなくなりました。各教室には火災保険の加入内容の確認(補償範囲など)と、火の元の管理方法の見直しを徹底しました。
これらの事故のほか、事故には至らない「ヒヤリハット」に関しても、事例を一覧にし、研修で共有しています。
集めた情報から予防策を練るだけでは十分ではありません。それを会社全体で共有しなければ、社員に対応が周知されません。危機管理マニュアルを作成し、一人ひとりに周知徹底しましょう。
事故や事件に直面する頻度が高いのは、経営者よりも現場の社員です。一人ひとりがしっかりと対応できるよう訓練することで、起こりうるトラブルに備えられます。
トラブル対応の具体的方法
トラブルへの具体的な対応は、次の手順を踏むと良いでしょう。
①速報
②詳細の検証と報告
③再発防止策の報告
これは放課後等デイサービスが事故を自治体に報告するさいに踏む手順ですが、広く他業種でも活用できます。顧客との信頼関係を維持するために、おすすめしたい手段です。
対応が不誠実な会社にありがちなのが、③の事後報告だけで済ませることです。それでは事実を隠蔽しているように受け取られかねません。
とくに事故の発生から報告まで時間が経ちすぎている場合、顧客は、「なぜそんな重大な事実を隠していたの?」と不信感を抱くでしょう。
顧客に影響があるかどうかは問題ではありません。たとえ顧客に実害がおよばなくても、「事実を報告する」ことが誠実な対応です。
webサイトなどで速報を流し、その後詳細を検証し再び公表します。そして最後に再発防止策を策定したことを、トップページなど多くの人の目につきやすい場所で周知します。
現代は「ばれないだろう」が通用しない
現代はSNSで誰もが情報を発信できる時代です。
「ばれないだろう」「わからないだろう」「公表の必要はないだろう」と対応を行わずにいると、知りもしない一般市民から動画や写真が流出する可能性があります。
内容がセンセーショナルであればあるほど、あっという間に拡散し、犯罪者のように批判にさらされるのです。
最近では2022年9月に、ある和菓子の老舗がネット上で炎上する事件がありました。当時の社長が8月末に自動車事故を起こし、そのさい相手を恫喝している様子が動画で撮影されていたのです。
事故から1ヶ月が経過したころその動画が出回り、会社は猛烈な批判にあい、社長の交代にまで発展しました。
同社は事故直後に速報を行わず、ネット炎上後に報告の遅さを陳謝しています。その後の対応が速かったことで信頼を回復しましたが、速報の重要性を再認識させられた事案です。
さいごに
対外的なトラブルに対応するには、「トラブルは起こるもの」という認識に立ち、解決法をシミュレートすることが大切です。対応方法を誤ると会社の存続にもかかわります。
対外的なトラブルに対処するときは、リスクマネジメントの意識を強く持ち、危機管理マニュアルを作成すると良いでしょう。そのさい、以下の4点を心がけましょう。
①自分たちだけは大丈夫だと思わない
②トラブル発生時は会社よりも顧客を守る
③普段から仕事に誠実に取り組む
④トラブル対応でその場しのぎの姿勢を見せない
これらを心得た上で、同業者のトラブル事例を研究し、自社の危機管理に活かします。
そのさい、全社員への情報共有を忘れないようにしましょう。
実際にトラブルと対峙するのは現場の社員です。一人ひとりが対応方法を理解することが大切です。
なお、実際にトラブルが起きて対応にあたるときには、情報の正確な開示が必要です。以下の順に情報を開示すると良いでしょう。
①速報
②詳細の検証と報告
③再発防止策の報告
③だけしか行わないと、顧客の信頼を損ないかねません。面倒でも3回かけて情報開示を行うことが、顧客の信頼を繋ぎ止めるために必要です。
対外的トラブルは頻繁に起こるものではないぶん、万一起これば社会的責任を強く問われます。日ごろから状況をシミュレートし、対策を立てておかなければなりません。
私たちは放課後等デイサービスの運営をとおし、さまざまな困難を乗り越えてきました。その経験から、あなたの不安をなくし、直面する困難を解決する手助けをいたします。
対外的トラブルでお困りの方や、リスクマネジメントをうまく行えない方は、DokTechにお気軽にご相談ください。今すぐ実行に移せるアドバイスをいたします。
著者情報
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独立・起業の最新ニュースや、明日からすぐ使えるテクニックを、分かりやすくご紹介!
フランチャイズ経営者やフリーランス、法人役員など、多種多様なキャリアをもつメンバーでお届けしています。
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