心理カウンセラーの仕事はきつい?大変な理由とやりがいのリアルな声
更新日:2023.10.6
投稿日:2023.7.26
現代社会は複雑化するとともに、混迷を深めている背景から、こころの悩みやメンタル不調を訴える人が増えています。
メンタル不調の人に寄り添い、前向きな変化を促すのが心理カウンセラーです。病院や学校、自治体などで需要があり、活躍を期待されています。
ところが「心理カウンセラーの仕事はきつい」と聞き、ネガティブな印象を持つ人もいるようです。
なぜ心理カウンセラーはきついといわれるのでしょうか。今回はその理由と、心理カウンセラーに向いている人・向いていない人の特徴、心理カウンセラーにおすすめのストレス解消の方法を解説します。
目次
心理カウンセラーの仕事できついこと・大変なこと7選
現役心理カウンセラーの感想も交えながら、心理カウンセラーの仕事が「きつい」「大変」と感じることを7つにまとめました。
- 相談者の人生にかかわるプレッシャーがある
- 相談者からきつい言葉をかけられる場合がある
- 集中力を使うため疲れる
- 無力感を得やすい
- 資格を取得したのに仕事がない・給与が安い
- 研鑽を続けなければならない
- 健康管理に人一倍気を遣わなければならない
人によって大変さを感じるポイントは異なります。自分ならどのように感じるか、考えながら読んでみてください。
相談者の人生にかかわるプレッシャーがある
心理カウンセラーを訪れる相談者のほとんどは、こころを病んでいたり、傷を負っていたりします。
神経が過敏になっており、心理カウンセラーが発する一言ひとことに強く影響を受ける人もいる事実を心得ましょう。
心理カウンセラーの言葉が相談者の人生を決定づけることもあります。その重みをプレッシャーと捉えると「仕事がきつい」と感じるかもしれません。
「不用意な発言ができない」「使う言葉一つひとつを選別しなければならない」などの注意点も心理カウンセラーの負担になる可能性があります。
相談者からきつい言葉をかけられる場合がある
相談を聞くうちに、心理カウンセラー自身がこころを傷つけられる場合があります。
相談者は心理カウンセラーとは異なり、言葉を選んで話す「言葉のプロ」ではありません。
自分の悩みで頭がいっぱいの相談者のなかには、厳しい言葉・乱暴な言葉を無意識で使う人がいます。被害者意識が強く、心理カウンセラーの言葉の端に噛みつき激高する人もいるでしょう。
言葉に対し繊細な感性を持つ心理カウンセラーだからこそ、相談者の発言に傷つけられ「仕事がきつい」と感じるケースが見られます。
関連記事:開業カウンセラーの現実は厳しい?原因と稼げる方法まとめ
集中力を使うため疲れる
相談者の本心や言葉にならない思いは、ほんの些細な一言や言葉の間にあらわれることがあります。
心理カウンセラーは相談者の本心に近づくため、言葉の一語一句から言葉の間ににじみ出る思いまでをキャッチしようと集中します。
その集中力は「相談者の言葉をすべてコピーして返せるほど」と表現する心理カウンセラーもいるほどです。
心理カウンセラーは人並み以上に集中力を酷使する仕事です。集中する分疲れやすく、疲労感から「仕事がきつい」と感じる人もいます。
無力感を得やすい
カウンセリングは、毎回成功するとは限りません。さまざまな要因で消化不良のまま終わらざるを得ないケースもあります。
感謝してもらえたカウンセリングでも、「別の結論があったのではないか」「もっと役に立てたのではないか」と自問を続ける心理カウンセラーもいます。
未経験や経験が浅いうちは「先輩のように上手にできない」と徒労感を得るケースもあるようです。
心理カウンセラーが生きるのは、正解のない「人と人とのかかわり」の世界です。スキルの習熟に上限がないことから、無力感を得やすい仕事でもあります。
資格を取得したのに仕事がない・給与が安い
せっかく資格を取得をしたのに、「仕事がない」「給与が低い」「前の仕事より給料が少ない」との理由から、割に合わずきついと感じる心理カウンセラーもいるようです。
実際、心理カウンセラーの平均年収は高くはありません。
ある調査によると、国家資格である公認心理士で年収350万~450万円です。一方、日本人の平均年収は443万円(令和3年度)、正社員雇用に限ると年収は508万円に上ります。
心理カウンセラーには非正規雇用も多い点も、収入の不安定さを助長します。
心理カウンセラーとして働き安定した収入を得るには、自治体・教育機関・病院などの正規雇用を目指しましょう。
関連記事:心理カウンセラーは仕事がないのか|求人状況や将来性、おすすめ資格解説
研鑽を続けなければならない
こころの問題の深刻化につれ、カウンセリング業務の難度が上がっています。
カウンセリングの理論と手法の進化、新しいテクノロジーを取り入れたカウンセリング手法の開発など、心理カウンセラーには常に最新情報へのキャッチアップが求められます。
「資格を取得すれば勉強終了」ではなく、実務経験を積みながらスキルを磨き続ける必要がある点で、時間的・体力的なきつさを感じる人もいます。
関連記事:副業カウンセラーも資格を取得すべき?稼ぐ手順と注意点、収入UPのコツ
健康管理に人一倍気を遣わなければならない
他人のこころのケアをするためには、自分自身が心身ともに健やかである必要があります。自分が安定していないと、人に寄り添い話を聞くエネルギーが湧いてきません。
心理カウンセラーには人一倍、心身の管理に配慮が求められます。
風邪や偏頭痛、感染症などの体調面と、自分自身のメンタルケアの両方に気をつける必要があります。
休日といってもハメを外せず、自己管理し続けなければならない点にきつさを感じるかもしれません。
心理カウンセラーの仕事はきついけど魅力もある!やりがい3選
仕事はきつい一方で、多くの心理カウンセラーがやりがい・魅力を感じていることを3つ、紹介します。
- 相談者のポジティブな変化を見守れる
- 多様な考え方に触れ、価値観をアップデートできる
- 学んだことをすぐに実践でき、成長を感じられる
どの職種に就いても、多少のきつさはあるものです。しかし、きつさを上回るやりがい・魅力があれば、続けられる人も多いのではないでしょうか。
これから心理カウンセラーを目指すか迷っている人は、よく比較検討するためにも参考にしてください。
相談者のポジティブな変化を見守れる
心理カウンセラーの最大のやりがいは、相談者が前向きに変化する様子を間近で見られる点でしょう。
カウンセリングを通じて相談者が元気と自信を取り戻し、日常生活に復帰し成長する姿を見守れるのは、この仕事の醍醐味です。
現役心理カウンセラーからも、つぎの場面で喜びを感じるとの声がありました。
- 不登校生徒が学校に行けるようになった
- 休職者が復職できた
- 夫婦関係・親子関係が改善した
多様な考え方に触れ、価値観をアップデートできる
心理カウンセラーは老若男女も職種も問わず、多くの人の話に耳を傾けます。自分とは異なる立場にある人の悩みを通して、多様な考え方に触れられる仕事です。
知らなかった考え方や判断軸を知る機会がほかの職種より多く、たくさんの気づきを得られるのも心理カウンセラーのやりがいの一つでしょう。
得た気づきは自分の考え方や価値観をアップデートするきっかけとなり、副次的に自分の悩みが解決する場合もあるそうです。
学んだことをすぐに実践でき、成長を感じられる
新しいカウンセリング手法や理論を習得したら、すぐにカウンセリングで実践できます。技術の向上は、心理カウンセラーとしての成長につながります。
これまで困難を感じていた課題がスキル習得により前進する可能性もあり、相談者にも喜んでもらえるでしょう。
自分の努力とその結果のスキルアップが、すぐに相談者にプラスを生み出せる実感を得やすいのが心理カウンセラーの仕事です。実践的な学びを好む人に適しています。
心理カウンセラーの仕事で「きつい」ことの回避テクニック
心理カウンセラーは日々、相談者から悩みを聞きます。
心理カウンセラーに寄せられる悩みには深刻なケースも多いため、話を聞く側がきついと感じると逃げ出したくなるかもしれません。
相談者に感情移入しすぎると、心理カウンセラーのメンタルがもちません。カウンセリングの際に意識したい、相談者と適度な距離感を維持できるコツを解説します。
同感ではなく「共感」する
心理カウンセラーが相談者の話を聞くときは「共感」の姿勢を保持します。反対にやってはいけない聞き方は「同感」です。
- 共感:相手の心情や感覚を把握しようとする聞き方。「相手がどう感じるか」に注目する。
- 同感:相手の話を聞いて「自分がどう感じるか」を重視する聞き方。自分に注目している。
心理カウンセラーは相手に寄り添い、話を聞き出します。このとき同感の聞き方をすると、相談者の悩みの影響を真正面から受けてしまい、心理カウンセラー自身がきつくなります。
相談を聞く際はあくまで「相談者の心情理解」を重視してください。資格取得の際にも勉強する内容です。心理カウンセラーの基本的な心構えとして、押さえておきましょう。
客観力を高める
心理カウンセラーは、相談者に共感しながら話を真剣に聞きます。
しかし真剣になるあまり、相談者に入り込みすぎてしまうとメンタルを病むかもしれません。「相談者の悩みを解決しなければ」との義務感にかられると、一人空回りにもなりかねないでしょう。
心理カウンセラーはあくまで、客観的に問題を紐解く人です。客観力を高めるトレーニングを積み、一歩引いて物事を見るスキルを身につけましょう。
<客観力を高めるトレーニングの例> ・クリティカル思考を癖づける ものごとをあえて批判的に見ると、それまで見えていなかった側面に気づける。 ・セルフモニタリングを習慣にする 日常のトラブルやミスの原因を分析する。自分の欠点や思考の癖に気づける。 |
心理アセスメントを大切にする
カウンセリングの基本である「心理アセスメント」に立脚したかかわりを心掛けましょう。
仕事に慣れてきても自己流になってはいけません。基本を無視したやり方はどこかにひずみが生まれ、仕事をきつく感じる要因になります。
心理アセスメントは相談者の方向性を明らかにするために必要な情報を、十分に集める作業です。
心理アセスメントを丁寧に行うと、相談者により適したカウンセリングが提供できるようになります。
行動観察や面接、検査、周囲からの情報収集を面倒がらず進めましょう。集まった情報を客観的に分析すると、相談者の本当の課題が見えてきます。
心理カウンセラーに向いている人の特徴3つ
心理カウンセラーに向いているタイプを3つ、抽出しました。
- 他人に関心が持てる人
- 「人の力になりたい」との思いが強い人
- 周りから影響を受けにくい人
「自分は心理カウンセラーに向いているのか」「このまま心理カウンセラーを続けて良いのか」と悩んだら、つぎの3つのタイプに当てはまるかチェックしてみてください。
他人に関心が持てる人
世の中にはそもそも「他人に関心がない人」がいます。相談者のなかにもいるかもしれません。他人への関心は、心理カウンセラーの大切な資質です。
相談者は自分のこころの痛みや悩みに共感してもらえるだけで安心し、こころを開きます。
相談者が安心して話ができる心理状態になるまで、根気よく関心を寄せ続けられる人は心理カウンセラーに向いています。
「人の力になりたい」との思いが強い人
「相手の力になりたい」「課題を解決したい」とポジティブな気持ちを強く持てる人も、心理カウンセラーに向いています。
カウンセリングは相談者と長い時間をともにするケースもある、根気のいる仕事です。
人の力になりたいという強い思いは、長丁場のカウンセリングをやり切る原動力になります。
相談に乗り前向きな変化があらわれた相談者の喜びを、自分の喜びとできる人も心理カウンセラーに向いているでしょう。
これまで自分は、どういった場面で喜びを感じたか書き出してみてください。
周りから影響を受けにくい人
共感の聞き方と客観力が重要な心理カウンセラーは、周りから影響を受けにくい人が向いています。
相談者の悩みに入り込みすぎ、相手の悩みを自分の悩みと同一視してはカウンセリングがうまく進みません。
相談者に寄り添うことと、感情移入を混同しないよう気をつけましょう。
自分に入ってくる情報と自分の思考を切り離せる人や、良い意味で「他人は他人」と割り切れる人が心理カウンセラーに向いています。
心理カウンセラーに向かない人の特徴3つ
心理カウンセラーではなく、別の仕事に就いたほうが能力を発揮できる人もいます。
これから紹介する3つのタイプに当てはまったら、心理カウンセラー以外の仕事を探したほうが幸せになれるかもしれません。
- 自己主張意識が強い人
- 責任感が強すぎる人
- コミュニケーションが苦手な人
心理カウンセラーに向いていない人の特徴を具体的に紹介します。
自己主張意識が強い人
「わたしが」「自分が」と自分自身が目立たないと気が済まない人は、心理カウンセラーに向いていません。
カウンセリングの主役は相談者です。心理カウンセラーは相談者に伴走し、相談者の人生をよい方向に「導く」役割を担います。
心理カウンセラーはあくまで裏方であり、先頭に立ちたがってはいけない点を理解しましょう。自己主張が強い人は起業やアーティスト、クリエイターなど別の仕事のほうが向いています。
責任感が強すぎる人
仕事をする以上、責任感は大切です。
しかしあまりに責任感が強すぎ、相談者の悩みも「自分が解決しなければ」と力が入ってしまう人は心理カウンセラーに向いていません。
心理カウンセラーは相談者が抱える課題を整理し、相談者が自分の力で先に進めるようサポートするのが仕事です。
課題を解決する主体は相談者である点を忘れてはいけません。
カウンセラーが責任感のあまり先走って課題を解決しても、相談者にとっての解決にはなっていません。
目の前に問題があると、すべて自分で解決したくなるタイプの人は、心理カウンセラー以外の仕事を探すほうが良いでしょう。
コミュニケーションが苦手な人
心理カウンセラーはコミュニケーションにもとづく仕事です。そもそもコミュニケーションが苦手な人には向いていません。
相談者のなかには「こころを開かない」「会話がまともにできない」「負の感情をぶつける」など、簡単にコミュニケーションが成立しない人もいます。
相談者がどのようなタイプでも、心理カウンセラーはこころを開いてもらう糸口を探し続ける必要があります。
心理カウンセラーの仕事で「きつい」「大変」と感じたときのストレス解消法
心理カウンセラーも一人の人間です。きつさやストレスを感じ、ときに友人と発散したくなるのは「あるある」かもしれません。
しかし心理カウンセラーには守秘義務があります。ほかの職種なら可能な「友達とおしゃべりして発散」ができない点には気をつけてください。
では心理カウンセラーはどのようにストレスを解消すると良いのでしょうか。おすすめの方法を3つ紹介します。
映画やドラマに没入する
休日はお気に入りのドリンクとフードを確保し、映画やドラマに浸りましょう。
心理カウンセラーのストレス解消には、こころ揺さぶられる感動ストーリーがおすすめです。
涙にはネガティブな感情を解放しすっきりさせる「カタルシス効果」があります。知らずに溜め込んでいたストレスも涙とともに流れ、気分爽快になれるでしょう。
カウンセリングで相談者が思い切り泣いた後に「なんだかスッキリしました」と話す、あの体験を休日にぜひやってみてください。
天気の良い日に散歩をする
天気が良い日は、歩いてみましょう。散歩にいくのもよし、歩いて通勤するのもおすすめです。
太陽の光を浴びるとビタミンDが体の中で合成されます。ビタミンDは脳機能を正常に保ち、メンタルヘルスにも良い影響を与えるといわれています。
ビタミンDは免疫力向上も期待できるため、体調を万全に整えておきたい心理カウンセラーにはぴったりです。
歩くと意外な場所に素敵なカフェを発見したり、季節の移ろいを感じたりと小さな喜びも感じられるでしょう。
ヨガ・ストレッチ・筋トレをする
カウンセリングの合間にもできるストレス解消方法として、ヨガやストレッチ、筋トレもおすすめです。
適度に身体を動かすヨガ・ストレッチは「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンの分泌を促します。自律神経が整い、ゆったりした呼吸でリラックス効果が期待できます。
筋肉に負荷をかける筋トレは、セロトニンにくわえてドーパミンやテストステロンが分泌されます。ドーパミンはやる気とポジティブ思考、テストステロンは高揚感や闘争心をかきたてるホルモンです。
ヨガやストレッチ、筋トレを取り入れて心身ともに健康でフレッシュなエネルギーにあふれた心理カウンセラーを目指しましょう。
きつい仕事もある!それでも心理カウンセラーを目指すには?
きつい仕事だとしても、仕事に興味があり、心理カウンセラーになりたい人に向けて、目指す方法をお伝えします。
心理カウンセラーは、資格がなくてもなれる仕事です。しかし、未経験からチャレンジしやすくするために、また将来キャリアアップや高収入を得るために資格取得することをおすすめします。
心理カウンセラーになるための勉強ができるのは、大学・大学院、もしくは民間スクールのいずれかです。
大学・大学院でカリキュラムを履修する
大学・大学院に入学し、心理学のカリキュラムを履修する方法です。
公認心理士や精神保健福祉士、認定心理士、応用心理士、学校心理士などの資格を取得する場合は、所定科目や単位を履修・取得し、その上で試験に合格しなければなりません。
心理学・カウンセリング講座で学ぶ
民間のカウンセラー養成スクールで、心理学・カウンセリング講座に申し込み、心理学を学ぶ方法です。最近では通信講座で学べるスクールも人気があります。
プロフェッショナル心理カウンセラーやメンタル心理カウンセラー、チャイルドカウンセラーなどを目指す場合は、所定の教育機関でカリキュラムを修了後、試験に合格する必要があります。
まとめ
心理カウンセラーは責任の重さや徒労感、収入の不安定さなどを理由に「きつい」と感じる人もいる仕事です。
一方で相談者の人生に寄り添って前向きな変化を見届ける、やりがいにあふれた仕事でもあります。
他人に関心があり、多くの人の人生を助けたいと願う人にとっては天職になるかもしれません。
日々、深刻な相談を聞く心理カウンセラーはストレスがたまりやすくもあります。自分なりの気分転換法を見つけて「仕事がきつい」と感じる前にストレスを発散できるように工夫しましょう。
心理カウンセラーは、生涯に渡って研鑽を積みスキルアップを続けられる魅力的な仕事です。
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