「独立を夢とは思わない方が良い」意外と知らないローカル向けSNS運用で地域No.1を目指すフォトグラファー
更新日:2023.3.23
投稿日:2023.1.4
たくさんの人に趣味として楽しまれている「カメラ」。その楽しさに惚れ込み、プロとして独立を夢見る人も多いでしょう。しかし、誰もがスマートフォンでキレイな写真を撮れる昨今、プロのフォトグラファーとして独立し生計を立てていくのは簡単ではありません。
そんな厳しい世界で、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言の真っ只中に独立したフォトグラファーがいます。人口30万人ほどの地域に根ざして、目覚ましい活躍を見せる若きフォトグラファー、ハヤシヒロナオさんにお話を伺いました。
目次
ご経歴と活動内容について
これまでのご経歴と今の活動内容を教えてください
20歳で学校を退学し、地元から出て、知り合いがいた札幌市のIT企業に3年ほど勤めていました。就職した当時はローマ字の入力くらいしかできませんでしたね(笑)。
その後、地元の北海道旭川市に戻り、食品通販サイトを手がけている企業に転職します。その企業で2年半ほど勤めて、フォトグラファーとして独立しました。個人事業主としての活動をスタートして8ヶ月後に法人を設立。現在に至っています。
活動はフォトグラファーが中心です。ほかにはホームページ制作や映像制作、DTPデザイン(紙媒体のデザイン)などを手掛けています。どれも地元に根付いての活動です。
※ 札幌市の人口は約200万人(全国4位)。対してハヤシヒロナオさんが活動している旭川市は約30万人。
独立までの背景について
なぜ独立を?そして、なぜ地元を選んだのでしょうか?
17〜18歳くらいからずっと「独立をしたい。自分の店を持ちたい」と考えていました。地元のどこにいっても友だちがいるような街を作りたいんです(笑)。自分のお店を持ちたいと思っていました。
しかし当時は独立に向けての具体的なプランがあったわけでもなく、夢に近いものでしたね。ただ「独立をするなら地元で」ということだけは決まっていたんです。
自分で思っている以上に地元愛が強いタイプみたいで、学生時代から地域のイベントを運営したり、ローカルのラジオパーソナリティを務めたりしていました。地元をあえて選んだのではなく、自分の中では「地元でやるのが当たり前」だったんです。
なぜフォトグラファーを選んだのですか?
「地元での独立が先」で「フォトグラファーが後」でした。最初は古着屋をやりたいと思っていたくらいです(笑)。
独立をなんとなく考えはじめたのが17〜18歳。本気で独立を考えて、フォトグラファーになろうと思い始めたのは23〜24歳くらいでした。地元での独立を実現するために、僕が使えるカードは写真かWeb制作かデザインの3つ。そのなかでも、当時の僕に求められていたのが写真でした。
(ハヤシヒロナオさんの作品。Instagramにも多数掲載されています)
もちろん、打算的な気持ちでカメラを手に取っている訳ではありませんよ(笑)。17歳から撮影の活動はしているんで。今年で28歳になるので、カメラをとって10年です。とはいえ、はじめは実益を兼ねた趣味程度のものでした。結婚式の前撮りなどで時々お小遣いをもらいながらの活動ですね。でも、それが今のビジネスにつながっています。
フォトグラファーとして独立するときに不安はありませんでしたか?
0と言ったら嘘になります。でもどこかで、自分ならやっていける自信もありました。
準備もそれなりに進めていたので、独立後3ヶ月くらいは見通しは立っていたかなと思います。
独立に向けてどのような準備をされていたのですか?
最初に就職した札幌市のIT企業から、地元である旭川市への転職そのものが準備の1つです。
前提の話ですが、ローカルでの独立は口コミが重要だと考えています。その上で、3年も地元から離れていた新参者がいきなり独立するのは難しいかなと思ったのです。
実際、僕が札幌から旭川に帰ってきたとき、知り合いは少なくなっていました。”ホーム感”が薄れていましたね。独立するならばちゃんと地元に帰ってきて、地元で生活して、地元での繋がりを創ってから独立したい。それは会社員でもできることなので、まずは企業員として転職しました。目的は人脈づくりですね。転職するときはそれしか考えていません。
転職先の企業の仕事とは別に、個人で様々な企業とお仕事をしていました。撮影からウェブ制作、デザインなど。お金はもらわずに・・・ですけどね。人脈を大切にしたかったので、独立前はお金をもらっていない仕事でも、積極的に受けました。
当時からフォトグラファー以外のお仕事もされていたのですか?
独立前の活動ではフォトグラファーに絞らず、ウェブ制作やデザインもハイブリッドで手がけていました。この経験と実績は独立後にかなり役立ちましたね。というのも、僕が独立したのは2021年の3月のころ。新型コロナウイルスの緊急事態宣言、真っ只中のタイミングでした。お客様と対面で会うフォトグラファーとしては向かい風の状況です。
一方、新型コロナウイルスの影響で、多くの企業がIT化を急いで進める展開になりました。ホームページを作ったり、通販サイトを作ったリですね。ホームページを作るときはどうしても写真も必要なんですよ。そんなとき、商品の撮影からホームページのデザイン、そしてプログラミングまで僕一人で完結するので「便利な存在」になれたのかなと思いますね。
このような準備があって、独立してから3ヶ月くらいは収入の見通しは立っている形でした。これを活かして、この3ヶ月間は記念撮影の無料キャンペーンをしたんです。コロナウイルスによって結婚式や卒業式を開けない方がたくさんいたため、自分が何かできないかと考えたわけですね。「撮っても0円、撮れなくても0円だ」という思いで、0円でも人脈が得られる「撮る方」を選びました。
3ヶ月先の見通しは立っていましたが、0円で撮るからには、しっかり知名度向上に繋げないとダメージは大きいです。かなりの熱量で取り組みましたね。
お会いした全ての方々に、ハヤシヒロナオの自己紹介と、熱意や目標を伝えて口コミに繋げるように意識していました。独立直後の活動としては、よいスタートダッシュを切れたと思います。
あなたにとって独立とは?
ありがちな言葉ですが、目標であり、スタートラインですね。大学の入学と近いかもしれないです。受験生にとっては大学に入学することが目標ですが、大学に入学すればスタートライン、みたいなイメージです。
それと、独立を夢とは思わない方がいいかもしれないですね。個人によって感覚は違うと思いますが、遠くて抽象的な目標に使うのが「夢」という言葉ですので。
このスタートラインを切れるかどうかは、どれだけ具体的に先を見ているかにあると思います。
独立のために習得しておくべきテクニックは?
自分の熱量を落とさないためのマインドセットは、すごく大切だと思います。
自分の熱量を上げて行くのは楽です。事業がうまくいけばいいだけなので。
ただ、独立するとうまくいかないこともあります。仕事に失敗したとき、判断ミスしたとき、将来が不安になるとき、外から何か言われたとき。そういうもので熱量は下がります。すると自分の好きな事に集中できなくなることがあるんです。
そういうものから自分を守るテクニックがあると、より精力的に活動できるかなと思います。
ハヤシヒロナオさんはどのように熱量を保っているのですか?
僕がやっているのは、判断基準を明確にすることです。僕なら「名指しで指名してくださるお客様を大切にすること」ですね。
例えば、収入が少し危うくなったとき。どこかの企業の下請けカメラマンになり、継続してお仕事をいただくことも可能です。しかし、僕と直接契約するお客様よりも、下請けカメラマンとしてお客様からいただく料金のほうが低くなります。
そうなると、僕を直接指名してくださったお客様に失礼です。たとえ下請けで入ることになっても、直接お客様にご指名されるとき同じ料金をいただくようにしています。
自分の判断基準が明確だと「あのとき、こうしておけば……」と後悔することもありません。そんな形で熱量を保っています。
Instagram運用で意識されていることはあるのでしょうか?
Instagramのプロフィール画面を見たときに、僕が何をしている人か2秒で伝わるように意識しています。
僕はWeb制作やデザインなども手がけていて、フォトグラファーは事業全体のうち50%ほどしかやっていません。しかし、これらすべてをInstagramに載せると、何をしている人か伝わりません。
そこでInstagramは「ハヤシヒロナオは記念写真の撮影をする人」と伝わるような写真だけを載せています。ストーリー(24時間で消える投稿)はフォロワーさんしか見ないので、そこでは自由に、制作実績やお気に入りの作品や自分の活動内容を発信しています。
それと、Instagramは仕事量の増減にも役立っていますね。今のInstagramはホーム画面に3つまで投稿を固定できるんですが、夏は外で撮影したいお客様が多いので、キレイな風景とともに写る記念写真を。冬だと外の撮影は難しいので、スタジオで撮影した写真を固定してます。
業務量的に追加のお仕事をうけられないときは、夏に(冬向けの)スタジオ写真を固定したり、冬に(
夏向けの)屋外撮影の写真を固定すれば、お問い合わせの数も自然と減少します。
逆に、独立で通用しないテクニック、きれいごとのノウハウはありましたか?
よく見るSNS運用テクニック、間違っている訳ではないんですが、ローカル向けに発信するなら情報の取捨選択が必要です。
インフルエンサーになるためのSNS運用と、ローカルでお客様と繋がるためのSNS運用は別物です。
ローカル向けでやるなら、全体数は少なくてもいいから、地元向けの発信をする方が効果的だと考えています。
例えばInstagramのハッシュタグなら、たくさん投稿されている「#カメラマン」をつけて全国向けに投稿しても、地元の人に届かなければフォトグラファーの仕事にはつながりません。投稿数が少なくても「#旭川カメラマン」をつけて、ローカル向けに発信しています。
こんな形のローカル向けSNS運用をしていると、フォロワーの数もいいね数も関係なくなってきます(笑)。大切なのはアカウントのホーム画面を見たときの安心感で、そのためにはフォロワーが2,000人ちょっといて、継続して活動しているアカウントであれば十分だと思います。
今後の目標について
今後、ハヤシヒロナオさんが手がけていきたいものはありますか?
ローカルの広告業に注目しています。
地方は広告に関する関心がとても低いです。広告は都会でなければ良いものを作れない……と、どこか諦めている傾向も感じるんですよ。
しかし、地方にも格好いいクリエイティブ(制作物)を作れる魅力があるはずです。テレビCMだけが広告の時代でもなくなり、ウェブで低価格な広告を流せるようになりました。地方の広告にも可能性を感じるんです。
それと、旭川のフォトグラファーとして活動しているからには、旭川で1番でかい写真を撮ってみたい欲求もあります(笑)。ビルの上にあるような看板やサイネージなどですね。旭川でのフォトグラファーとして筆頭になれれば、外から来たお客様からご指名いただきやすくもなります。
やりたいことは無限にあるんですが、長くなってしまうのでこれくらいで(笑)。
独立を考えている人へのメッセージ
独立前にできることは意外と限られています。
先ほど独立はスタートラインと言いましたが、スタートラインに立たないとわからないことも、たくさんあるんです。
自分のお店を持ったり、お客様と直接やり取りしたりしないと、わからないことですね。当事者意識の違いかもしれません。なので、独立するなら早くしたほうがいいと個人的には考えています。
もう1つ。「外側のスキルを磨くこと」が大切だと思います。僕で言えば、内側のスキルがカメラの撮影技術やプログラミングなどのスキルですね。外側のスキルはコミュニケーション能力など、実作業とは直接関係ないものたちです。
内側と外側、優先度はあるのでしょうか?
内側のスキルを磨くことも大切です。しかし、外側のスキルがなければ、内側のスキルを100%は活かせません。お客様の取りたい写真をヒアリングするコミュニケーション能力がなければ、うまい写真を撮る能力を活かしきれないんですよ。
内側のスキルだけが習熟して外側のスキルが未熟だと、やりにくくなることも多いです。自分のプレイスタイルと、求められるコミュニケーション技術が合わなくなったりとかですね。内側と外側のスキルを一緒に成長させていくことが重要と感じています。
じゃあ具体的にどんな外側のスキルが必要なのかというと、業界や人によって異なります。独立前から何が必要か分かる人もいますが、そうでない人は思いきってスタートラインに立ってみるのも良いかと思うわけです。
独立の怖さは0ではないと言いましたが、やっぱり怖いところは僕にもありました。怖さを少しでも取り除くには、どこまで具体的にできるかです。夢を目標にして、目標を現実にできるよう、熱意を絶やさず挑戦してみてください!
お忙しいところありがとうございました。
旭川1の巨大写真ができたときには、ぜひ教えてください!
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著者情報
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