フリーランス・自営業者が親の介護で利用できる介護を楽にする公的サービス

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フリーランス・自営業者が親の介護で利用できる介護を楽にする公的サービス

更新日更新日:2023.10.3

公開日投稿日:2023.3.22

今回から2回にわけて、フリーランスや自営業者が直面する「親の介護と仕事」をテーマに記事をお届けします。第1回は「介護を楽にする公的サービス」です。

  フリーランスや自営業者は、会社員と比べ「親の介護への対応が楽」という印象を持たれます。たしかに仕事に融通がききやすく、介護の時間を割きやすいことは事実です。しかし、その影響で仕事が減少すれば、そのまま収入の減少に直結します。会社員が取得できる「介護休業」のように、収入を守る仕組みがないからです。

介護で収入が減少したぶんは、自分自身で補填しなければなりません。睡眠時間を削り、心も体もぎりぎりの状態で仕事をしている話もよく聞きます。フリーランスや自営業者にとって、介護をしながら仕事を守るのは容易ではないのです。

したがって、フリーランスや自営業者こそ、介護に備えた下調べや準備が大切です。突然介護の必要に迫られても、円滑に対応を進められるように心がけましょう。

本稿では介護に直面したら最初に利用を検討する、「公的介護保険制度」を説明します。これを読むことで、制度の概要や、あなたが前もって準備すべきことがわかります。

目次

フリーランス・自営業者がはじめに認識すべきこと

1.フリーランス・自営業者がはじめに認識すべきこと

フリーランス・自営業者は自己裁量で仕事を進められることが多いため、「突然介護に直面しても大丈夫」と思いがちです。

しかし、会社員との違いを理解しておかないと、仕事や生活に大きな影響が生じます。

介護休業を取得できない

「介護休業」とは、労働者が要介護状態(※1)の家族を介護・世話するさいに取得できる休業制度です。対象家族1人につき、通算93日まで取得できます。

介護で仕事を休んだ場合、給与の最大67%が「介護休業給付金」として支払われます。満額はもらえないものの、生活ができる給介は支払われるため、安心して介護に専念できます。

介護休業給付金は、雇用保険から支払われます。したがってこの制度を利用できるのは「雇用保険の被保険者」のみです。

個人事業主やフリーランスは会社に所属していないため、雇用保険の被保険者ではありません(※2)。介護で仕事を休んでも、介護休業給付金の給付は受けられないのです。

※1)要介護状態とは、2週間以上の常時介護を必要とする状態を指します。

※2)会社従業員と兼業している場合、適用条件を満たせば会社の雇用保険に入れます。適用条件は、会社での1週間の所定労働時間が20時間以上、かつ31日以上雇用を継続する見込みがあることです。

自分の仕事を自分で守るしかない

フリーランス・自営業者には、介護休業のように仕事を維持し、収入を守る仕組みはありません。仕事をする時間を自分自身で確保し、収入が減らないように生活を見直さなければなりません。

フリーランスと言っても、その働き方はさまざまです。業務の自由度にも差があります。自己裁量で動ける割合が低い場合、介護での休業は致命的です。

仕事量が減る、収入が減るだけならまだ良いほうです。介護が中心の生活になれば、案件を断らざるを得ないことや、クライアントの要求に応じきれないことが多々出てきます。

クライアントにとって取り引きしづらい状態が続くようなら、契約を打ち切られることも覚悟しなければなりません。

あなたの状況を鑑み、雇用を守ろうと積極的に動いてくれるクライアントは稀でしょう。

フリーランス・自営業者が取り得る自己防衛策

仕事を守り生活を維持するには、以下の準備を進めることをおすすめします。

  • 介護について相談できる公的機関を確認する
  • 公的サービス利用の流れを理解する
  • 介護中の仕事の仕方をシミュレーションする
  • 金銭的負担を減らすサービスや保険を把握する

とくに公的サービスおよび利用の流れの理解は必須です。介護に直面したとき、最初に頼るのは公的機関だからです。仕組みを知っておけば、なるべく早期に動くことが可能です。

公的介護保険制度の利用

2.公的介護保険制度の利用

介護で受けられるさまざまな支援を支えているのが「介護保険制度」です。40歳になると加入が義務付けられます。保険料を支払う代わりに、必要なときに支援を受けられる公的な仕組みです。

ここではこの介護保険制度を利用する方法と、支援の流れを説明します。

制度の利用には要介護認定が必要

介護保険を利用できるのは、65歳以上の第1号被保険者と、40歳〜64歳の第2号被保険者にわけられます。

第2号被保険者は、保険を受けられる病気の範囲が決められており、末期がんや関節リウマチ、脳血管疾患など16の特定疾患に限られます。

40歳〜64歳で介護保険制度を利用したい場合は、厚生労働省のホームページで「特定疾病の範囲」をご確認ください。

特定疾病の選定基準の考え方 | 厚生労働省

要介護認定の基準

寝たきりや認知症など、常時介護を必要とする状態を「要介護」、日常生活は送れるものの、家事や身支度などに支援が必要な状態を「要支援」と呼びます。

両者とも状態が段階わけされ、要介護は1〜5、要支援は1と2が設定されています。数字が大きいほど介護や支援の必要性も高い状態です。

要介護・要支援の判定

要介護や要支援の判定は、各市町村が行います。手順は次のとおりです。

  1. 居住地の自治体の介護保険担当窓口で申請を行います。
  2. 認定調査員が自宅(入院している場合は病院)を訪問し、身体機能や認知機能のチェックが行われます。また主治医の意見書がある場合は、それも提出します。
  3. コンピューターによる一次判定を経て、介護認定審査会による二次判定が行われます。
  4. 申請から一ヶ月程度で認定結果が通知されます。

<ポイント>

要支援要介護
状態家事や身支度などに支援が必要な状態寝たきりや認知症など、常時介護を必要とする状態
段階わけ1と22のほうが支援の必要性が高い1~5数字が上がるほど介護の必要性が高い

介護サービスを受ける準備

要介護・要支援の判定が出たら実際に介護サービスを受ける準備に移ります。

要支援の場合

要支援で受けられるのは「介護予防サービス」です。常時介護が必要な状態にならないよう、心身を維持し機能を向上させる訓練を行います。

まずは居住地を担当する「地域包括支援センター」に相談に行きましょう。介護を受ける人の心身状態、あなたの仕事の状態などを説明します。

必要なケアが受けられるよう「介護予防ケアプラン」を作成してもらいましょう。

要介護の場合

要介護の場合、ケアマネジャーをつけなければなりません。ケアマネジャーがケアプランを作成することで、介護サービスを受けられます。

要介護認定が下りると、自治体からケアマネジャーのリストをもらえます。自宅との距離などを考慮し、何人かに連絡を取ると良いでしょう。

ケアマネジャーは後から変更することもできるので、まずは一度会ってみて、困っている点、お願いしたいことなどを伝えましょう。

ケアマネジャーは、介護を受ける本人やあなたの希望を聞きながら、最適なケアプランを作成します。ケプランが決まれば、サービスが開始されます。

<ポイント>

要支援要介護
まず行うこと地域包括支援センターに行き、相談する自治体からもらうリストでケアマネジャーを探す
お願いすること介護予防ケアプランを作成してもらうケアマネジャーに希望を話し、最適なケアプランを提案してもらう

要介護では自宅介護だけでなくさまざまなサービスがある

2-3.要介護では自宅介護だけでなくさまざまなサービスがある

要介護の場合、最も優先すべきは、実際に介護を受ける親の意思です。どのような形で介護を望むか、話せるうちに決めておきましょう。

また、あなたの仕事のスタイルも重要です。フリーランス・自営業者は自宅を事務所や店舗として利用していることがあります。

その場合、自宅介護は適さないかもしれません。通所型や施設入居型のサービスなど、ケアマネジャーの意見を聞きながら、最適な方法を見つけ出しましょう。

要介護で受けられるサービスは以下のとおりです。

自宅介護の支援

自宅で介護する方法を選ぶ場合、訪問型のさまざまな支援が受けられます。

①掃除や洗濯、買い物、調理などの生活援助

あなたが仕事で手が離せない場合、大きな力になるでしょう。

②入浴や排泄の世話などの身体介護

一人では体力的に厳しい場面で、専門家の援助が受けられます。

③浴槽を持ち込んでの入浴介助

家の風呂に入られない場合も安心です。

④リハビリの専門家による訪問リハビリテーション

リハビリに連れて行く手間が省けます。

⑤療養上の管理・指導をする居宅療養管理指導

医師や歯科医師、薬剤師、栄養士などが家に来てくれます。

通所サービス

近隣の施設に通いながら介護をする方法です。要介護1〜2の場合は週に3〜4回、要介護3〜4では週に4〜5回通所します。施設の車が家まで迎えに来るため、あなたが送迎する必要はありません。

受けられるサービスには「デイサービス」と「デイケア」があります。

デイサービス

介護に重点を置いたサービスです。食事や入浴支援、心身の機能を維持・向上させるためのリハビリなどを行います。認知症ケアに特化した施設もあります。

デイケア

医療ケアに重点を置いたサービスです。病院など医療機関や、介護老人保健施設で実施されます。「専門的なリハビリが必要」と医師に判断された場合のみ受けられます。

身体機能や認知機能を回復し、日常生活を送ることを目的とします。

<ポイント>

デイサービスデイケア
重点を置くサービス食事や入浴支援、リハビリなど介護が中心身体機能や認知機能の回復を目指す医療ケアが中心
条件要介護1~5 要支援・要介護の認定を受けており、医師から「専門的リハビリが必要」と判断されること

ショートステイ

施設に短期間宿泊し、食事や入浴などの生活支援、リハビリを受けられるサービスです。仕事で短期間家を開けざるを得ない場合や、業務繁忙期などに大きな助けになります。

施設入所を考えている場合は、施設の環境に順応する準備に利用しても良いでしょう。

なお、ショートステイを1ヶ月に利用できる限度日数は、以下のとおり要介護度によって決められています。この日数を超えると自己負担になります。

要介護度日数(/月)
要支援16日
要支援211日
要介護117日
要介護220日
要介護328日
要介護430日
要介護530日

施設入所

自宅での介護が難しい場合は施設に入所することもできます。介護保険施設は3種類あります。

特別養護老人ホーム(特養)

要介護3〜5が入所の原則です。ただし重度の認知症や虐待疑いなど緊急性が高い場合は、要介護1〜2でも入所できる場合があります。

介護と生活支援に重点が置かれ、日常的に介護を必要とする人が安心して入所できます。

ただし待機者が多く、社会的な問題にもなっています。

介護老人保健施設(老健)

要介護1から入れます。在宅に復帰することを目的に、リハビリを中心とした介護や医療ケアを行います。あくまでも在宅復帰を前提にするため、一日も早い退所を目指します。

特養のように長期入居入所(終の棲家としての入居)ができる施設ではありません。平均的な入居期間は3〜6ヶ月です。

介護医療院

要介護1から入れます。医療・介護・住まいの場を提供することが目的の施設で、医療ケア体制が充実しています。長期的に医療を受ける必要に迫られた場合に、療養しながら日々の生活が送れます。

<ポイント>

特別養護老人ホーム介護老人保健施設介護医療院
対象要介護3~5の人要介護1から要介護1から
特徴・介護と生活支援に重点が置かれている・長期間生活可能 ・リハビリを中心に介護や医療ケアを行う・在宅復帰が前提・医療ケア体制が充実している・療養しながら長期生活できる

養護老人ホームの扱い(介護保険施設外)

このほか、自立した高齢者を支える「養護老人ホーム」があります。養護老人ホームは、生活環境や経済的理由で困窮した高齢者を「扶養する」施設です。

社会復帰が目的のため、自治体が対象者の調査を行い、入居の可否を決定します。介護を目的としないため、介護保険施設外です。

公的介護保険制度の金銭的負担

3.公的介護保険制度の金銭的負担

公的介護保険制度を利用した場合、毎月の金銭負担はどのくらいになるのでしょうか。

負担割合

サービスを利用したときの負担割合は、前年の収入をもとに決定します。前年の合計所得金額と、年金収入を合計したものが「収入」です。

<同一世帯の65歳以上人数が1人の場合>

340万円以上→3割負担

280万円以上340万円未満→2割負担

280万円未満→1割負担

<同一世帯の65歳以上人数が2人以上の場合>

463万円以上→3割負担

346万円以上463万円未満→2割負担

346万円未満→1割負担

参照 介護保険制度について | 多摩市

詳細は居住地のホームページをご覧ください。

介護保険の支給限度額

介護保険の支給額は、介護度により変わります。介護度が重いほどサービス内容も増えるため、支給額も増加します。

毎月の支給額を超える出費がある場合、超過分は自己負担となります。一般的には親の年金で賄うことが多いものの、支払いが難しい場合はあなたが支払うことになるでしょう。

ケアプランを作成するときに、極力支給範囲内でおさまるように調整してもらいましょう。

支給限度額

介護保険料は単位制のため、「実施したサービスの単位数×単位単価(10円〜)」で計算されます。ここでは単位単価を10円として計算します。

介護度支給限度額
要支援150,320円
要支援2105,310円
要介護1167,650円
要介護2197,050円
要介護3270,480円
要介護4309,380円
要介護5362,170円

この金額を超過する場合、以下の計算式で自己負担金額が決まります。

(かかった金額−支給限度額)×負担割合

例)負担割合1割で要介護3、1ヶ月に30万円かかった場合

(300,000−270,480)×0.1=2,952円

大切なのは介護にかかるお金を、あらかじめ親子間で話しあっておくことです。あなたがお金の準備をしなければならない場合は、ケアマネジャーと相談し、一か月に必要な金額の目途を立てておきましょう。

さいごに

さいごに

親の介護への不安は、年齢を重ねるほどに増えていきます。

どんなに健康に留意していても、高齢になれば病気のリスクは高まります。あらかじめ公的介護制度の詳細を知り、必要になったときにすぐに対処できることが重要です。

フリーランス・自営業者は介護休業の仕組みがなく、自分の仕事は自分で守らなければなりません。公的介護制度を円滑に利用できるよう、本稿を参考に準備を進めてください。

少しでも親の状態に不安を感じたら、まずは地域包括支援センターを訪ねることをおすすめします。実際に一歩を踏み出すことで、「介護と仕事を両立する生活」をよりイメージしやすくなります。

DokTechでは介護をしながら働くフリーランス・自営業者を応援します。介護が生じた場合の働き方の相談も受け付けています。どうぞお気軽にお問いあわせください。

著者情報

DokTech編集部
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