脱サラ農業のリアルな体験談・年収&失敗しないコツ│移住したい人は必見
更新日:2023.8.11
投稿日:2022.11.10
「満員電車に揺られる生活から、田舎暮らしに転身したい」、そんな思いから農業をやってみたいと考える人も多いのではないでしょうか。
しかし初めての就農では、何から始めれば良いのか困るケースも少なくありません。また「本当に脱サラして大丈夫か」「農業でも安定収入は得られるのか」などの不安もつきまといます。
本記事では、脱サラして農業を始めたい人に向けて、リアルな体験談や現実的な収入、農家になるメリット・デメリット、脱サラ農業を成功させるコツなどを解説します。移住におすすめの自治体も紹介しています。
最後まで読み、脱サラや就農を考えるヒントとしてください。
目次
脱サラして農業を始めた人の現実
脱サラをして農業を始めた人が、実際どのような生活をしているのか紹介します。リアルな体験談や現実的な話も、将来を考える参考にしてください。
脱サラで農業を始めた人のリアルな声
「会社員時代は、毎日イヤイヤ出社していた。脱サラして農業を始めてからは、畑にいるとやることがたくさんあり、無心で仕事ができる。素の自分に戻れる感覚が好き。息が詰まる会社員のまま、人生が終わらなくてよかった」(男性・脱サラ農業歴3年・家族あり) |
「実際、農業で稼げる人は、他の分野でも稼ぐ力があると思う。むしろ、他の分野の方が稼げるかもしれない。新規就農して精算して、JAに出荷しても稼ぎは知れている。でも農業を初めたことは後悔していない」(男性・脱サラ農業歴3年・独身) |
「農業は農業で、毎年課題がある。売上を維持するには、収益率を改善するか・他の収入源を確保するか。そんな課題を解決するのも自分。主体的に課題解決を考えるのも楽しい」(男性・脱サラ農業歴1年・家族あり) |
脱サラ農業の収入はどれくらい?
農業収入は、耕作規模や農作物によって異なります。脱サラして農業を始めた人の収入統計もないため、正確な数値は算出できません。
参考までに、農林水産省がまとめた「農業が収入と主となる人」の平均年収を紹介します。
令和2年度では、農業粗収益は1,992万円でした。経費が1,576万円かかっており、差し引き収入は415万円ほどとなっています。
脱サラ農業が若者の間で注目を集めている理由4選
脱サラ農業が注目されている理由を4つにまとめました。
- 職場の人間関係のストレスなく働ける
- 自給自足などの人生で実現したいことを叶えられる
- 農業向けの補助金制度が充実している
- 自分のペースで働ける
脱サラして農業を始めるライフスタイルは、若者の間でも注目を集めています。
Instagramのハッシュタグ件数をチェックしても、「脱サラ」「農業」などの注目度がわかります。
なぜ若者が会社員を辞めて農業を始めたいと考えるのか、理由をわかりやすく解説します。
職場の人間関係のストレスなく働ける
自営業として農家になると、会社員特有の上司・同僚との人間関係から解放されます。
育てる農作物選びから育て方、収穫時期、出荷先まで、すべてを自分の責任で決められる裁量は、農業ならではの醍醐味です。
「気に入らない上司から指示されたくない」「同僚とのしがらみが面倒」「部下とのコミュニケーションがうまくいかない」と感じる人にとって、上司も同僚、部下もいない農業は魅力的に映るでしょう。
ただし農業法人に就職して農業をする場合は、会社員と同じように上司や同僚、部下がいます。
また自営・農業法人にかかわらず、地域の人や農作物の出荷先(JAなど)、農業資材の取引先などとの人間関係は避けられません。
自給自足などの人生で実現したいことを叶えられる
効率やスピード重視の競争社会と距離を置き、自分らしさを大切にする生き方をしたい若者からも農業は注目されています。
都会にはない自然に恵まれた土地で暮らしながら、自給自足の生活や地産地消、オーガニック野菜の生産に携わることは、「農業=ていねいな暮らし」のイメージがあるためです。
自然とともに生きる農業に、ワークライフバランス実現の望みをかける人もいます。
「雨が降った日はガレージで趣味を、晴れたら畑へ」と、晴耕雨読への憧れも農業を志す若者の増加に寄与しています。また、子育てや家族と過ごす時間を大切にしたい人にも農業は支持されています。
ただし、実際に農業を始めると憧れとのギャップに驚くケースも多いようです。
「雨の日も意外にやることがある」「勤務時間や残業の概念がなく、一年中働いている感じ」などのコメントも、SNSの投稿で見られました。
農業向けの補助金制度が充実している
補助金制度の充実も、若者の意識を農業に向けさせるきっかけとなっています。
「農業にチャレンジしたい、でもお金がない」という若者でも、国の支援を受けて一歩踏み出しやすい環境が整っているからです。
新規就農者向けの補助金には、以下の例があります。
名称 | 内容 | 条件 |
農業次世代人材投資資金 | 就農前研修のための資金(2年以内)と、就農直後の経営確立資金(3年以内) | 就農予定時の年齢が、原則49歳以下独立・自営就農/雇用就農を目指すこと など |
青年等就農資金 | 新規就農者向けの無利子資金 | 18歳~45歳未満の者認定農業者以外 など |
就職氷河期世代の新規就農促進事業 | 研修費用を助成(150万円/年・最長2年) | 事業申請時30歳以上、かつ就農予定時49歳以下など |
詳しくは農林水産省ホームページをご覧ください。
自分のペースで働ける
若者の価値観が多様化している社会的背景も、農業が注目される理由です。
「Z世代」と呼ばれる現代の若者(1990年代後半〜2010年代前半生まれ)は、「会社で出世する」「残業もバリバリして稼ぐ」「仕事こそ生きがい」とは考えません。
「自分らしく生きたい」「仕事より趣味や好きなことを大切にしたい」などの価値観を持っています。
若者が農業に注目する理由は、自分のペースで仕事ができるイメージのある農業のほうが、安定していても面白みのない会社で働くより魅力的だと感じる点にあります。
ただし農業も、完全に自分のペースで働けるとは限りません。
天気を見ながら作業を進めるため、予定通りに休日が取れない場合もあります。また台風や豪雨、強風、雹などの天災も仕事のペースに影響を与えます。
脱サラして農業を始めるメリット・デメリット
脱サラして農業を始める人が発信する情報も増えてきました。
充実した補助金制度もあり、若者の新規就農に対するハードルは低くなりつつあります。
しかし実際に「脱サラして農業」を検討すると、「その選択は正しいのか」「本当に大丈夫か」と不安もよぎるはずです。
ここからは、脱サラして農業を始めるメリットとデメリットを比較してみましょう。
メリットは「自分の好きなようにできること」
自営で農業を始めると、農作物も農法も、資金調達も土地選びもすべてが「自分次第」になります。大きな責任は伴いますが、自分で考え決断する積み重ねにやりがいを感じる人も大勢います。
新しい作物や農法にチャレンジし失敗しても、失敗から学べば「生きたスキル」として身に付きます。失敗を活かし、次の年に工夫すれば大きな収益となって戻ってくるかもしれません。
他人から指示された仕事ではなく、やるべきことを自分で見つけ、自分の裁量で判断していきたい人や、探求心が強く新しいチャレンジをし続けたい人にとって、農業はとてもやりがいのある仕事です。
デメリットは「価値観の違いや販路の確保に苦労すること」
脱サラし農業を始めた人の多くは、地域の人との価値観の違いに苦労します。
田舎に行けばいくほど昔ながらの価値観をもつ人が多く住むため、新しい農法や作物に挑戦していると怪訝な目で見られるケースもあるようです。
また土地を借りて農業を営む場合、農薬使用や作物育成方針の違いで地主と対立する場合もあります。
さらに新規就農者は、作った作物の販路も考えなければなりません。JAに出荷すると手数料がかかるため、自家販売したいと考える人もいます。
「直売所で売る」「店舗を構える」「マルシェに出す」などさまざまな販路がありますが、認知され人気を確立するには地道な努力が必要です。
脱サラ農業で失敗しないための4つのポイント
脱サラ農業で失敗しないためのポイントをまとめました。
- 農業に対して熱量をもつ
- 独立する前に農業を体験してみる
- 取り扱う作物は事前に絞っておく
- 農業関係者の人脈をつくる
会社員と農業では、働き人がまったく違います。会社員の感覚で農業を始めても、失敗は避けられません。農業を始めるのであれば、覚悟をもって取り組みましょう。
脱サラして農業を始める前に、押さえておきたいポイントを4つ解説します。
農業に対して熱量をもつ
自然が相手の農業では、思うようにいかない場面にしばしば遭遇します。
- 作物を上手に育てられない
- 天候不順でうまく育たない
- 雑草や害虫の被害に遭う
- 収穫間近の作物を動物に食べられる
- 台風でビニールハウスが飛ぶ …など
想定外の展開になっても、「また頑張ろう」「失敗を糧にしよう」と思える熱量があるかどうかは、農業の成否を分けるポイントとなります。
また農業で収益を上げるためには、「品質を上げる」「販路を拡大する」などの経営者視点も大切です。農業を多角的にとらえ改善を続ける根気の有無も、確認しておきましょう。
関連記事:脱サラ起業で失敗する8つの理由|厳しい現実と成功をつかむヒント
独立する前に農業を体験してみる
いきなり独立し自営農家になるのは、おすすめできない選択です。
農業を始めるための土地や農機具を用意するためには多額の資金が必要だからです。「憧れの田舎暮らし」と思って移住を伴うと、費用はさらにかさみます。
成功の目途が立たないうちから負債を抱えるのは、リスクが大きい選択です。
失敗したことを活かそうとしても、農業は春夏秋冬をとおして結果が徐々に表れるビジネスです。改善したとしても、成果を確認できるのは1年後になる可能性もあります。
こういったリスクを回避するためにも、脱サラ前に全国各地で行われている農業体験に参加してみましょう。農業体験には、以下の例があります。
- 休日にも参加可能、半日程度の体験型観光農業
- 農家暮らしも体験できる、数泊しながらの農業実習
- 本格的な準備におすすめ、数か月~数年の農業研修
先に脱サラし農家になった人の体験談を聞けるタイプの体験会や、移住相談ができる研修もあります。農業体験の情報は、自治体のホームページで探せます。
取り扱う作物は事前に絞っておく
農業を始める前に、栽培する作物をある程度絞っておく作業も大切です。
作物を絞り込んでおくと、土地探しの効率が上がります。作物は気候や土壌、水の影響で味や品質が変わるため、作りたい作物が決まっていると作物に合う土地が探しやすいからです。
また作物を絞り込むと収穫時期と収穫量、販売価格が見通せるため、収益計画が考えやすくなります。
初心者のうちは栽培が容易で安定需要が見込める「定番野菜(キュウリ・玉ねぎ・ジャガイモ・ニンジンなど)」が良いでしょう。
都市近郊で農業をする場合は、飲食店需要を見込んで珍しい野菜や果樹を選択しても良いかもしれません。
農業関係者の人脈をつくる
農業は、出荷先や取引先、地域のつながりがあって成り立つビジネスです。人脈があれば、初めての土地での農業でも、良いやり方や知恵を教えてもらえる可能性があります。
反対に、知人がいない土地でいきなり農業を始めると、周囲からの支援は得られません。とくに地方にはまだまだ「ウチ・ソト」意識が残るため、ヨソモノ扱いされてしまう可能性があります。
農業で成功したいなら、独立や移住をする前に農業関係の人脈を作っておきましょう。以下は、農業関係の人脈をつくる方法の参考例です。
- 農業を始めたい自治体の窓口で、人を紹介してもらう
- JA関係者
- 地域の名物農家
- 新規就農者のコミュニティ など
- 道の駅や直売所に通い、地域の農業の様子を聞く
- ビジネス交流会に参加し、農業関係者とのつながりを作る
リスクをできるだけ少なく、かつ農業が初めてでも確実に収益を上げたい人には「フランチャイズ」も候補としておすすめです。フランチャイズで農業を始める詳しい情報は、以下をご覧ください。
関連記事:フランチャイズで始める農業|開業資金やオーナーの年収・業界の将来性
脱サラ農業を始めるのにおすすめの地域3選│移住におすすめ
国内でも、脱サラして農業を始める人への支援が充実している地域を3つ、紹介します。
「独自の補助金がある」「農業体験が充実している」など、これから農業を始めたい人にとって嬉しいサポートの準備がある自治体を厳選しました。
移住先候補を比較するヒントとしても、活用してください。
長野県飯山市
長野県の北部、新潟県との県境にある飯山市は、移住・就農支援が充実しています。都市部からのUIターン支援を行っている点も特徴的です。
◎ 農村定住支援住宅・家賃1万円(光熱費など別)で専用住宅に入居できる・定住を支援する目的のため、上限3年間・地域の農家から田畑や機械を借りる、農業指導が受けられるなどのメリットあり |
◎ 飯山市UIJターン就業・創業移住支援事業補助金・1都3県、愛知県、大阪府から飯山市に移住した人が対象・県が支援する企業などへの就業、または創業支援金の交付決定が条件・補助金額は単身世帯60万円、2人以上の世帯100万円 ※18歳未満の子ども1人につき30万円加算 |
飯山市には北陸新幹線の停車駅があり、東京から2時間で移動できます。移住前の見学に通いやすい点でも、おすすめです。
公式ホームページ:飯山市農業振興係
群馬県前橋市
関東にほど近く、露地野菜や果樹、花き、畜産などが盛んな群馬県前橋市は、支援金の充実度が特徴です。代表的な補助金・助成金を紹介します。
◎ 補助金・助成金
新規就農者育成総合対策支援事業 | 農業技術の習得研修費用を補助。年間150万円(最長2年間) |
新規就農者奨励金 | 新規就農者に対する奨励金。10万円 |
新規参入者定着支援事業 | 移住し新規就農する人に対し、家賃の半額(上限2万円/月)を補助。 |
担い手支援事業(新規就農者支援事業)補助金 | 農業用機械などを購入する際の費用を30%補助。上限30万円 |
6次産業化支援 | 農業用品の加工施設整備費の30%を補助。上限120万円 |
経営継承・発展支援事業補助金 | 地域農業の継承者に対する補助。上限100万円 |
新規就農者・野菜生産拡大支援 | 野菜を生産する新規就農者がJAで種苗・肥料・農薬を購入した費用を補助。上限税込5万円 |
上記のほかにも、条件を満たした新規就農者が受けられる補助金や無利子・低金利の融資制度などもあります。
公式ホームページ:前橋市「新規就農者を応援します」
徳島県美馬市
四国・徳島県の西部に位置する美馬市では、水稲や野菜、そば、果樹などの生産が盛んです。
自治体とJA、先輩農家などが協力体制を組み、就農から定着までのトータルサポートが受けられる点が特徴です。
◎ 就農まで
- マッチングを経た研修先農家の紹介
- 就農する農地の斡旋
- 住居の斡旋
- 就農計画の作成サポート
- 農機具や営農資金の相談
◎ 定着まで
- 販路確保、開拓支援
- 道の駅への出品サポート
- 農業規模拡大に必要な人・土地の確保支援
- 地元農家や若手農家との交流会開催
公式ホームページ:美馬市農業振興
まとめ
「スローライフ」「丁寧な暮らし」「自分らしい人生」などのキーワードとともに登場することが多い農業は、いま若者からも注目を集めています。
自分で育てたオーガニック野菜での子育てや、自然とともに生きるライフスタイルも農業なら実現できます。
一方で、農業は決して憧れだけでできる仕事ではありません。収穫(売上)は天候に左右され、重労働をともなう作業もあります。当然、虫や雑草とも戦わなければなりません。
脱サラ農業を始める前に、体験会に参加してみましょう。農業に携わる人から実際の声を聞くと、思ってもみなかったメリットや苦労ポイントに気付けるでしょう。
当メディアでは、メルマガや公式LINEで、「脱サラ」「独立」「農業」などに関するお得な情報を配信しています。まずは登録し、役立つ情報を集めてみてください。
著者情報
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