介護タクシーの開業方法│必要な資格から年収・将来性までを徹底解説

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介護タクシーの開業方法│必要な資格から年収・将来性までを徹底解説

更新日更新日:2023.4.23

公開日投稿日:2022.9.6

介護タクシーの開業方法│必要な資格から年収・将来性までを徹底解説

ご家族の通院介助などで介護タクシーを利用されたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。介護タクシーを利用したことがあればご存知かもしれませんが、介護保険が適用される介護保険タクシーと、保険は適用されないけれど自由度が高い介護タクシーの2種類があります。後者の介護タクシーは個人でも開業でき、参入しやすいと言われています。

では実際に開業するに当たりどのくらいの資金が必要なのか、どんな資格や免許が必要なのか。さらにはどのくらいの年収が見込めるかなど気になる介護タクシー開業のステップを説明します。

目次

介護タクシーとは

介護タクシーとは

介護タクシーとは、一人での移動が困難な高齢者や障害者の方を支援するためのサービスです。一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送限定)という分類で、通常の誰でも利用できるタクシー事業とは異なり、一人でタクシーや公共交通機関を利用できない方や患者などの輸送限定タクシーのことです。

また国土交通大臣の許可を得なければ事業ができません。大きく分けて2種類に分けられます。介護保険が適用されるかされないかの違いです。

介護保険適用外の介護タクシー

介護保険が適用されない介護タクシーは利用者への介助は行いません。そのため、介護職員初任者研修などの介護の資格は必要ありません。(介護職員初任者研修については後ほど詳しく触れます。)普通運転免許証2種取得のみで開業できるため、開業資金が一番安く抑えられますし、個人でも開業できます。

要介護認定の方だけでなく要支援の方やご家族も介護タクシーも同乗が可能です。全額負担になりますが、利用目的の限定がないので、介護保険適用外の趣味や娯楽、冠婚葬祭といった目的にも利用されています。

介護保険適用の介護タクシー

もう一方の介護保険タクシーとは、利用者への介助が行えます。そのため、介護職員初任者研修などの介護の資格が必要です。こちらは、サービス料金に介護保険が適用されます。開業するに当たり法人化をする必要があります。

利用者は、要介護認定1から5の方、一人で公共交通機関を利用できない方など限定されており、家族は同乗できません。また利用目的も限定されており、通院や本人が行く必要のある買い物などで趣味や娯楽、冠婚葬祭には利用できません。

介護タクシーを開業するために必要な要件・資格

介護タクシーを開業するために必要な要件・資格

ここでは個人開業も可能な介護タクシー開業のために必要な資格や免許を説明します。介護タクシーを開業するに当たり、国土交通省の各運輸局の事業許可を取得する必要があります。この許可を取得するには以下の条件が必要です。

  • 人的要件
  • 設備要件
  • 資金的要件

介護保険が適用となる法人場合はこれに加え、介護系の資格も必要です。

人的要件

次の3点を満たしている必要があります。

  • 普通2種免許を保有しているドライバーがいること
  • 運行管理者がいること(整備管理者と運転者の兼任が可能)
  • 整備管理者がいること(運行管理者と運転者の兼任が可能)

設備要件

次の条件すべてを満たしている必要があります。

・営業区域内に使用権限が3年以上の休憩室や仮眠室のある営業所もしくは事務所があること。
*営業区域とは・・・都道府県を単位としたものであること。営業所または事務所は所有でも賃貸でも構いません。賃貸の場合には契約書に1年ごとの自動更新規定があることなどが条件です。
・土地や建物が法令に違反していないこと建築基準法や消防法、農地法などに触れないもの。ただし農地は不可。

・事業に応じた大きさであること使用する車両が全て収まること。車両と車庫、車両ごとに縦横50cm以上の間隔があること。

・リフトやスロープなどがある福祉車両が1台以上あること車両の年式は問われません。また軽自動車でもかまいません。

・営業所に隣接した車庫があること営業所に併設できない場合は、直線で2km以内で管理が十分行える場所に設置すること。

・タクシーメーターを設置していること。時間制のみの運賃の場合、メーターは不要です。

資金的要件

必要な開業資金以上の金額を申請日以降常に確保しておくことです。所要資金の半分以上を確保しておきましょう。詳細は後述します。

介護系の資格

介護保険が適用されない介護タクシーの場合には必要ありませんが、持っておくと便利です。介護保険が適用されるものには介護系の資格が必要です。以下の3種類があります。

  • 介護職員初任者研修修了者
  • 介護職員実務者研修修了者
  • 介護福祉士

すべてが必要ではありません。どれか一つを取得できれば良いでしょう。

介護職員初任者研修修了者

介護保険が適用になる場合、乗車の際の乗り降りの介助をおこなう可能性があるので、介護職員初任者研修が必要です。介護職員初任者研修終了者の資格は研修を修了することで取得できます。研修で学ぶ内容は、介護の仕事の基礎です。9科目130時間の講義を受けます。講義修了後、実施される試験に合格すると修了です。

この3点の中で最も取得しやすいのが介護職員初任者研修修了の資格です。福祉系または家政系の学科のある高校生でも研修を受ければほぼ100%取得していますのでハードルは高くありません。この研修を修了することで、生活援助や身体介護等の訪問介護を行えます。

介護職員実務者研修修了者

介護職員初任者研修の上位に位置づけられる資格です。介護職員実務者研修課程を修了することで、介護に関する専門的な知識と実践的な技術を習得します。この研修をとおして、ケアマネージャー(介護支援専門員)が作成した介護プランをもとに、訪問介護サービスの具体的な計画のプランニング、介護職員への技術指導、業務指示など、より質の高い介護サービスを提供できるようになります。

介護業界で介護福祉士を目指す人にとっては必須の条件です。無資格から受講すると450時間の講義を受講する必要があります。実務者研修を修了し一定の要件を満たせば、医療行為であるたん吸引や経管栄養などを行うことができます。できる仕事が増え利用者からの信頼や給料アップも見込めます。

介護福祉士

介護福祉士は介護職の国家資格です。福祉に関する専門スキルを持つ人材を養成し、「在宅や施設における介護の充実強化を図ること」「国民の福祉を向上させること」を目的として制定された資格です。この資格を持っていれば、介護タクシーだけでなく、利用者の生活全般を理解し介護の中核を担う役割を果たすことができるでしょう。介護福祉士を取得していれば、勤務する施設や法人などからの信頼も厚く貴重な存在として認知されるでしょう。

介護タクシーを開業するまでの道のり

介護タクシーを開業するまでの道のり

ここまで介護タクシーとは何か、実際に必要な資格や条件などを見てきました。ここでは実際に開業するまでにどのような順番ですすめていくのかを見ていきましょう。

  • 開業資金の用意 
  • 普通自動車二種免許取得 
  • 介護系の資格の取得または研修を受ける準備 
  • 設備要件を満たす 
  • 介護タクシー事業の許認可申請~許可 
  • 福祉車両を入手 
  • 運輸開始届の提出

7つの手順で開業準備を進めていきます。

開業資金の用意

開業資金の用意

まずは売上が安定するまでの期間の運転資金を用意しておきましょう。2〜3か月分が目安です。

開業のために必要な資金は、車両代やタクシー用メーターの設置費用が上げられます。自宅で開業しない場合は車両保管代、設備要件を満たす営業所(事務所)の賃借料もしくは購入費が必要です。

開業資金の相場を一覧にすると、以下のとおりです。

<車両代>

軽自動車:200万円~300万円/普通車:300万円~400万円

*中古車両の場合は、より安価で入手可能です

<タクシー用メーター>

15万~20万円

<車両保管代>

5,000円~10,000円/月

<営業所(事務所)>

5,0000円~10,0000円/月

<普通自動車二種免許取得>

20万円程度

<介護職員初任者研修>

10万円程度

<運輸局登録免許税> 

3万円

<備品や車椅子購入費等>

20万円前後

ほかにも、ストレッチャー・寝台・スロープなどの特殊設備、車いす、AED、そして営業用の名刺や制服、ロゴの作成、消毒・除菌のための備品など必要に応じて調達します。これらの購入費もかかることを頭に入れておきましょう。

普通自動車二種免許取得

普段私たちが所有している運転免許証は普通自動車一種免許です。普通自動車二種免許とは、乗車定員10人以下、車両総重量3,500kg未満、最大積載量2,000kg未満の条件すべてを満たす車両で、旅客運送をするために必須の免許です。二種免許をお持ちでない場合は自動車教習所などで取得する必要があります。教習所にもよりますが、1か月程度で取得できます。費用は20万円前後です。

介護系の資格の取得または研修を受ける準備

介護職員初任者研修修了者や介護職員実務者研修修了者、介護福祉士など介護系の資格は、介護タクシー(介護保険が適用にならない)の開業には必要ありませんが、介護保険タクシーの開業には必須です。取得に向けた準備をしていきましょう。

設備要件を満たす

先述したとおり営業所、休憩・仮眠室、車庫の準備をします。これらは許可申請するにあたって必須の条件です。

介護タクシー事業の許認可申請~許可

介護タクシー事業者として許認可を受けるための流れを紹介します。

運輸支局への許可申請

介護タクシー事業者となるためには、運輸支局に「一般旅客自動車運送事業経営許可申請」と「運賃認可申請」などをおこなう必要があります。営業所所在地を管轄する、運輸支局に申請書類一式を提出します。詳しくはこちらをご覧ください。

介護タクシーをはじめるには│国土交通省 地方運輸局

法令試験を受験

上記の申請が受理されると、法令試験の受験があります。時期は適宜なのでかならず確認しましょう。試験は45分間で30問の設問に○×で回答します。8割以上正解で合格です。試験は運送六法など持ち込みができます。

許可証の交付

試験合格後、3か月ほどで運輸支局から許可証が発行されます。その後正式に介護タクシー事業者として登録されます。

福祉車両を入手

福祉自動車とは、車いすまたはストレッチャー用のリフトやスロープなど、特殊な設備を備えた乗降しやすい装置が施された自動車のことです。福祉自動車は許可証の交付のあとに購入します。運輸局が、資金的要件を確認するため許可するまでの自己資金を預金残高証明書にて確認するためです。通常は車両を購入した先で換えてくれますが、ナンバーが緑色になっていることを確認しましょう。また、メーターの取り付けも行います。

運輸開始届の提出

許可証交付後、6か月以内に運輸局に提出します。運輸開始届の表紙、任意保険証書の写し、許可を受けた車検証の写し、事業用施設の写真などの書類を提出します。

介護保険が適用される介護保険タクシーの開業条件

介護保険が適用される介護保険タクシーの開業条件

介護保険が適用される介護タクシーは、介護保険タクシーと呼ばれることがあります。介護保険タクシーの場合、運転手は「介護職員初任者研修」など介護の資格を持っている必要があり、車の乗降などドライバーが利用者の介助をします。原則として、利用者家族など要介護者以外は介護保険タクシーに同乗できません。

介護保険が適用にならない介護タクシーは個人で開業でき、介護資格や研修などは必須ではありません。しかし介護保険が適用される介護タクシーは、「個人での開業はできない」「訪問介護事業所の指定を受けること」などの条件があります。

法人を立ち上げる

介護保険タクシーは、訪問介護事業の一つになるので訪問介護事業所を設立する必要があります。訪問介護事業所設立場合、個人では開業できず、「非営利法人」と「営利法人」どちらかの法人を設立する必要があります。具体的な例をあげると、一般的なもので「NPO法人」「合同会社」「株式会社」があります。目的や条件などが異なりますので、どの法人にするのかは検討が必要です。

訪問介護事業所の指定を受ける

都道府県・市町村へ訪問介護申請書類を提出します。申請書類や申請方法は地域によって異なります。指定を受けるにあたり、法人の設立とともにいくつかの基準を満たさなければなりません。

資金的要件は、所要資金の合計額の50%以上、かつ、事業開始当初に要する資金の100%以上の自己資金を、申請日以降、常に確保していること、などです。人員的要件としては、最低でも2人以上の従業員が必要であることなどが挙げられます。

介護タクシーの開業で申請できる補助金・助成金

介護タクシーの開業で申請できる補助金・助成金

介護タクシーで開業するに当たり、国や地方自治体に助成金や補助金を申請できます。助成金は条件を満たしていれば誰でも受け取れるので比較的通りやすいでしょう。補助金は件数制限や期間制限などがあり、条件を満たしていても受け取れないことがあるので注意しましょう。

福祉タクシー車両導入促進事業費補助金

神奈川県内を運送している福祉有償運送事業者などが対象となります。高齢者や障がい者が移動をしやすい環境を整えるための補助金です。福祉タクシー用の車両購入費用の一部が補助されますが、補助金額は条件によって異なります。詳しくは、国土交通省のご案内ページをご覧ください。

補助金のご案内(タクシー関係)|国土交通省

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者が地域の商工会議所や商工会議所の助言を受けて経営計画書を作成し、計画に沿った販売の開拓を行う場合にかかる費用の3分の2を補助する制度です。上限は50万円です。

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金とは、非正規雇用の労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成するものです。法人化して従業員を雇う際に参考になるかもしれません。

新潟県次世代タクシー等導入促進事業補助金

次世代タクシー等導入促進事業補助金とは、新潟県内のタクシー事業者が次世代タクシー等を購入する経費の一部を県が負担するものです。脱炭素社会の実現や高齢者などの移動手段の確保をすすめるための補助金です。次世代タクシーとは、電気自動車、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車のタクシーのことです。

関連記事:開業で活用したい補助金・助成金8選│申請のポイント・注意点も解説

介護タクシー開業で得られる年収

介護タクシー開業で得られる年収

個人で介護タクシーを自営して、一日8時間週・6日稼働して年収420万円程度が平均です。施設で正社員またはパートタイム職員として働いている介護タクシードライバーも合わせた平均年収が299万円です。

個人開業の方が、職員としてドライバーをするよりも収入は上がるかもしれません。また個人開業の場合事業拡大をしたければ法人化して従業員を雇うなど、自分の裁量で年収を上げることも考えられます。

介護タクシー市場の将来性 

介護タクシー市場の将来性 

日本はすでに超高齢社会です。介護が必要な高齢者が増え特に地方では、移動手段が発達していない場合、介護タクシーの需要はどんどん高まると予想されます。国土交通省は2018年にバリアフリー新法を制定し、福祉タクシーを推進しています。

同省の調査で、2018年度末の福祉タクシーの数は2万8602台でそのうち1万2533台がUD(ユニバーサルデザイン)タクシーでした。令和7年度末までに9万台を目標にしているとのことで、増えてきてはいるけれどまだまだ十分ではない状況です。

(参照:バリアフリー法に基づく基本方針における次期目標について(最終とりまとめ)|国土交通省

ユニバーサルデザインタクシーとは、身体が不自由な障害者や高齢者に配慮された、誰もが利用しやすい一般タクシー車両のことです。利用者は一般タクシー料金で利用できます。より多くのニーズを満たせるサービスとして注目されています。

ある地域では、一人でタクシーや公共交通機関を使えない高齢者の病院への通院時刻に介護タクシーの予約が殺到してしまい、手が回らないことがよくあるそうです。もっと介護タクシーの事業者が増えれば事業者同士で連絡を取って利用者に不安を与えずに済むかもしれません。

介護保険タクシーの需要はもちろんのこと、介護保険は適用されなくとも自由度が高い介護タクシーは、利用者側としても、毎回ドライバーが違うよりも、いつも同じドライバーが来てくれることが安心につながります。

サービスの質やコミュニケーションなど、自分の努力次第で利用者の信頼を得て事業を拡大していける可能性もあります。今後ますます需要拡大が見込まれる業種ですから、いまから開業して、地域での信頼を集めておくとよいかもしれません。

まとめ

介護タクシーの開業方法や条件、将来性を見てきました。今後の需要拡大が見込まれる業種であり比較的低資金で始められ、資格も取得しやすい介護タクシーは参入しやすい事業です。また地域の介護福祉を支えるお仕事のひとつとして社会貢献もできます。開業をしたいけれど何で開業すればいいか分からないと思われている方は、介護タクシーでの開業を目指してみてはいかがでしょうか。

介護ビジネスをもっと学びたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください!
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DokTeck編集部
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